シンデレラに玻璃の星冠をⅢ



「玲くん、玲くん!!!!!」



玲くんの声が聞こえてこない。



「玲くん…玲く…うああああん」



この不安。

この痛み。

この恐怖。



吐き出すように、堰を切ったように…あたしは大きな声で泣いた。

無言を貫く電話の相手に向かって。


どうしていいか判らない。

いつも玲くんに甘えてばかりのあたしは、緊急時にどうすれば切り抜けられるのか、自己判断が出来ない。


黄色い蝶が…やけにゆっくりと近付いてきている気がした。


「あああああ…」


壁状の蝶が…あたしの目の位置の高さに密集を始める。


いつも狩られる側の蝶と狩る側の人間が…立場を逆転させた時、蝶が思い浮かべる情とは…心とは、如何なるものか。


"ざまあみろ"



痛む足は、もう動かない。

痛む頭は、もう考えられない。


あたしの手からカバンが落ちた。


痛む頭には人々の絶叫が反響する。

泣きながら力一杯叫んでいる。


やがてそれは…あたしだけの声となり。

言葉にならない悲鳴を聞いた気がして、あたしはガタガタ震えてその場に崩れて座り込んでしまう。


タスケテ。


その中で…更に強く響いてきたのは、低い玲瓏な声。


シニタクナイ。


――俺を…忘れないで…。


「助けて……」


――幸せに……したかった…。



「お願い…助けて…」



――俺の…永遠…。



黄色い蝶が…急降下を始めて襲ってきたその時。


「いやあああああああああ!!!!」


風が走った。


風…。


何故か懐かしく思う風が…

突如吹き込んで、あたしの髪を大きく揺らした。



それは黄色い蝶を――

瞬く間に切り裂いたんだ。



「……!!!!」


あたしははっきりと見た。


黄色い蝶を粉々にしたのは、3本の爪痕。

白銀に光る、風の爪だった。


風の爪痕。

その形状は…クオンが負った傷と同じ。


あたしはぶるりと身震いした。


本能的に悟ったんだ。


蝶を撃退出来る、この特殊な風の爪は――

決して救済の…聖なるものではない。


ああ、これは――

また違う敵が現れたんだ。


だからこんな…悪寒を感じているに違いない。

クオンにですら傷を負わす相手に、あたしが何とかできるのか?


あたしは…切り抜けられるの?