「違う。逃げ道を塞いでいるんだ…!!!」
それはいわば蝶の壁。
夥しい数の蝶はあたしとの距離を保持したまま、横に並んで飛び、上下の動きで…塾の内部へと戻る道を遮断しようとしている。
「……っ!!!」
蝶の壁は厚くなり、あたしをぐるりと取り巻き始め…また走ろうとしたあたしは、足に力を入れた途端に激痛によろめいてしまった。
あたしの足首が、かなり腫れ上がっている。
動かすだけで、脳天までずきずき痛む。
逃げられない!!?
あたしは…諦めるしかないの!!?
ガツン。
――!!!!
あたしの上着のポケットから床に落ちたのは…あたしの携帯電話だった。
「……携帯…」
そうだ携帯で。
「携帯…機械…玲くんに…!!!」
短絡的な思考。
玲くんに救済を求めるのは、天啓のように思えたんだ。
あたしは、慌てて折り畳んだ携帯を開いた。
途端、画面に出てくるメッセージ。
"メール受信中"
記載されているメール受信数が膨れあがり、みるみるうちに800件を超していく。
「メールなんて、受信しなくていいから!!!!」
外部から電力を供給していないのに、どうしてこんな事態に陥っているのか判らない。
キャンセルボタンを押しているのに、勝手に受信を続ける携帯。
あたしは、構わず…通話の短縮ボタンを押し続け、ひたすら玲くんの携帯番号を呼び出す。
メール受信さえ終われば、玲くんに繋げられる。
早く、早く!!!
だけど。
「どうして受信数が倍になっていくの!!!? 通話を…通話をさせてよ!!!」
画面は、受信画面から変わることなく。
あたしは、終話ボタンと短縮ボタンを交互に押し続ける。
いつかはくる"終焉"の時間を待ち焦がれて、"#0"の短縮に力を込める。
――光栄だね、僕を"0"にしてくれるなんて。
――レイだからだろ、な、芹霞!!!! 意味なんかねえよな!!?
繋がれ、玲くんに繋がれ!!!
迫り来る黄色い蝶。
目覚めないクオン。
繋がらない携帯電話。
最悪の状況の、一縷の望みに賭けるんだ!!!
最後まで諦めるものか!!
この携帯電話こそが、あたしの"切り札"だ!!!
――切り札なんだ。
閃光(フラッシュバック)。
暗い暗い横須賀港。
あの時も黄色い蝶が――…
――早く行けえええッッ!!!
叫ぶあたしが見える。
誰に…叫んでいたのか。
ずきっ。
突如頭が脈打った。

