シンデレラに玻璃の星冠をⅢ



「違う。逃げ道を塞いでいるんだ…!!!」


それはいわば蝶の壁。

夥しい数の蝶はあたしとの距離を保持したまま、横に並んで飛び、上下の動きで…塾の内部へと戻る道を遮断しようとしている。


「……っ!!!」


蝶の壁は厚くなり、あたしをぐるりと取り巻き始め…また走ろうとしたあたしは、足に力を入れた途端に激痛によろめいてしまった。


あたしの足首が、かなり腫れ上がっている。

動かすだけで、脳天までずきずき痛む。


逃げられない!!?

あたしは…諦めるしかないの!!?



ガツン。



――!!!!


あたしの上着のポケットから床に落ちたのは…あたしの携帯電話だった。


「……携帯…」


そうだ携帯で。


「携帯…機械…玲くんに…!!!」


短絡的な思考。

玲くんに救済を求めるのは、天啓のように思えたんだ。


あたしは、慌てて折り畳んだ携帯を開いた。

途端、画面に出てくるメッセージ。



"メール受信中"



記載されているメール受信数が膨れあがり、みるみるうちに800件を超していく。


「メールなんて、受信しなくていいから!!!!」


外部から電力を供給していないのに、どうしてこんな事態に陥っているのか判らない。

キャンセルボタンを押しているのに、勝手に受信を続ける携帯。

あたしは、構わず…通話の短縮ボタンを押し続け、ひたすら玲くんの携帯番号を呼び出す。


メール受信さえ終われば、玲くんに繋げられる。


早く、早く!!!


だけど。


「どうして受信数が倍になっていくの!!!? 通話を…通話をさせてよ!!!」



画面は、受信画面から変わることなく。

あたしは、終話ボタンと短縮ボタンを交互に押し続ける。

いつかはくる"終焉"の時間を待ち焦がれて、"#0"の短縮に力を込める。


――光栄だね、僕を"0"にしてくれるなんて。

――レイだからだろ、な、芹霞!!!! 意味なんかねえよな!!?



繋がれ、玲くんに繋がれ!!!



迫り来る黄色い蝶。

目覚めないクオン。

繋がらない携帯電話。


最悪の状況の、一縷の望みに賭けるんだ!!!

最後まで諦めるものか!!


この携帯電話こそが、あたしの"切り札"だ!!!



――切り札なんだ。



閃光(フラッシュバック)。




暗い暗い横須賀港。



あの時も黄色い蝶が――…



――早く行けえええッッ!!!



叫ぶあたしが見える。



誰に…叫んでいたのか。


ずきっ。


突如頭が脈打った。