シンデレラに玻璃の星冠をⅢ



目で見えることこそ真実。

あたしの頭の中にある惨劇の光景は、過去の恐怖経験から来る妄想に決まっている。


現実を認識しろ!!

恐怖に足を竦ませるな!!


やっとの思いで戻ったロビーフロアには誰もいなかった。

玄関から入る者もいなければ、受付たる事務局にも人が居ない。


消えたのは学生や塾関係者だけじゃない。


玲くんも由香ちゃんも…此処にはいない。

まだ玲くんは由香ちゃんを追いかけているんだろうか。


早く、玲くん達の処に行かなくちゃ!!!


しかし――


「何で開かないの!!!?」


自動ドアが開かないんだ。

隙間に指先を入れて、こじ開けようとしてもびくともしない。


ドンドンと拳で思い切り叩いて見ても、分厚い硝子を前に衝撃も音も吸収されてしまう。


完全に…閉じ込められてしまったんだ。


全身から血の気が引いた時――


「!!! あれは…!!!」


硝子張りの向こう側の世界に、2人の自警団が歩いてくるのが見えた。


神の助け!!!


こうなりゃ更正施設に連れられてもいいから、粛正の名目で直ぐにここから連れだして貰おうと思った。


仲間を沢山呼ぶといい。

そして大勢の力と知恵で、この硝子をぶち壊して欲しい。


よし!!!

自警団が見逃せない程の"悪態"をついてやれ!!


同じ逃げるなら、同じ人間の自警団の手からの方が望みがあるから。

だけどそれは浅はかすぎた考えだったようで。

どんなに手を振って飛び跳ねても、免罪符を捨て去る真似をして中指立ててみても、硝子越し…自警団はあたしに気づくことなく、あたしの前を横切ってしまったんだ。


こんな近くにあたしは居るのに!!!

2人とも…気づかないなんて!!!


あたしは悪夢の舞台から逃げられない。


ああ――

S.S.Aの…再現だ。


今度の舞台の主演者は…あたし1人。


どうしよう。

どうすればいい?


あたしはスカートの裾をぎゅっと握りしめる。


どうする!!!?



――いやあああああ!!!

――逃げろおおおお!!!


耳に聞こえ続ける…姿の見えない者達の悲鳴、絶叫。

それはあたしの恐怖が、過去を再現しているだけにしか過ぎないというのに、妙にリアルで発狂したい心地になる。


「ああ…追いつかれた!!!」


膨れあがった黄色い蝶の大群は目の前に迫っている。

あたしの背には…開かない自動ドア。


しかしある一定距離に来ると、あたしに近付くのをまるで躊躇しているように、それとも見定めようとでもしているのか、攻撃性を示す前後左右の動きではなく、上下だけの動きを見せ始めたんだ。