シンデレラに玻璃の星冠をⅢ



パチパチパチ…。


拍手の音がした。

振り向けば情報屋だった。


「いやあ~。あれらの姿を捉えることが出来るなんて、成長しはりましたなあ~。大抵は"あれ"の速さに攪乱され、正体見極めることも出来ぬまま命取られて、この先は進めないんやわ~」


その"大抵"には入らねえアホハットは、腕組みをして、わざとらしくうんうん唸っていやがる。

こいつは…まあいい。

伊達に看板背負ってないことは判った。

この飄々とした軽薄さが、絶対こいつの第二の人生を損させている。

"あはははは"の氷皇と同じく。


「あれは何だ?」


櫂の問いにアホハットは、意外にすんなり答えた。


「あれは"淘汰の門番(ガーディアン)"と呼ばれるもんや。戦闘レベルで言えば、最下。"淘汰の門番(ガーディアン)"は本能で動くさかい、1体でも酷くやられれば、その他の防御本能が働いて…一目散に退散する。そうなれば終了、入口が開いたことになるんや」


最下…。

あれで最下…。



「何で…異形だ?」

続けてそう聞けば、アホハットは意味ありげに笑った。


「何をもって…異形だというんや」

「は? 足、3本だったろ!!!?」


思わず俺が叫べば。


「なんや、そんなことかいな。それは…普通が2本だという"定義(ルール)"に、ワンワンはんがどっぷり浸かってるから言えることや。

ワンワンはん達が異形と呼ぶ者にしてみれば、2本足で動く皆はん達の方が、異形の存在や」


「ということは…あんなのがうじゃうじゃいるのか?」


恐る恐る聞いてみると、


「いろどりみどり」


アホハットは得意げに言い切った。


緑皇の"緑"とかけているらしいが、引き攣った笑いしか出てこねえ。


櫂も溜息をついている。

小猿は…白目のままで。


「ま、"生きた屍"もある意味…異形の者だがよ、そんなのが沢山いるというのなら、裏世界は地獄の世界か?」


皮肉めいて笑えば、


「ワンワンはん…」


アホハットが口元だけを歪めた。


「本当の地獄というものは、こんな程度ではあらへんで?」


まるで…本当の地獄を見たかのように言うんだ。


「翠はんの…世界でいうならば、《妖魔》が蔓延する地の底。"奈落"。あれに比べれば、全然生やさしい上に、人工的や」


「何だ? お前は、そこに行ったことがあるのか?」

「上から垣間見ただけや。人間であれば、"奈落"に落ちれば1秒で発狂しま。しかも行ってしもうたら、戻ることは出来やしまへん。片道切符や。仮に出来たとしても、人としての機能は…食らい尽されて再起不能やろな。

皮膚なんて…一瞬の内に剥がされて、生きたまま骨にさせられて。だけど…死ぬことは叶わない。それが…本当の"地獄"…」