「!!!?」
そして俺は、唐突に膨らんだ凶々しい気を感じ取り、慌てて櫂を見た。
「煌、翠、気をつけろ!!! 敵が一斉来る!!」
「ちっ!!! 早いんだよ、動きが!!!」
俺の身体の捻りが少し遅く、腕を掠った感触がする。
「ほら~。お前が不法侵入するから、敵が来ちゃったじゃないか。ご大層な口をきくけど、僕なんかの敵じゃないね。そこで見てろよ。僕の勇姿を。わっかが何さ!! 僕の胡桃の方が威力があるんだよ、えいえいえいえいッッ!!!」
動く俺の髪にしがみついて、鉄の胡桃を投げているらしいチビ。
しかしやっぱりあてずっぽうなものは戦力にはならず。
そんな時、頭上からもう1つの声。
「ふん。我が一掃してやるわ。見ておれ、リスよ。
――急急如律令。
雷龍、出でよ!!!!」
突如、あたりが真っ暗になり、空の広範囲が無数の稲光によって、小小々猿のようにピカピカと光り出した。
その稲光は、やがて1つに集約を始め――
「「「龍!!!?」」」
遙か彼方にある黒い空で、踊り狂っているような…荒ぶったように光る龍の輪郭を象(かたど)っていき、
「雷龍、降臨!!!!!」
バリバリバリ…。
雷光で出来た龍が、凄い速さで垂直に下降を始めたんだ。
俺の頭に向かって。
何で俺よ!!!?
「マジ!!!? ちょ…やめろ、やめろッッ!!!」
慌てふためく俺だったが、龍は俺に直撃する前に折れ曲がるように身を翻し、軌道をそらした。
そして俺達に飛びかかろうとしていた、夥しい数の人型を、厳密に言えば…俺達が戦っていた舞台そのものを、龍の口から吐き出した大量の金色の光によって、黒く焦がしたんだ。
目映い光の中、俺達は目を細めながらも…見た。
焦げて消える寸前の、その輪郭を。
脳裏に、しっかりと焼き付いた。
それは――
「足が3本!!!!?」
異形であり…
「櫂、見たか!!?」
「ああ。爪だと思っていたものは…鉤爪(かぎづめ)だった。
陽斗と同じ、な」
そう。
――ぎゃははははは!!
今は懐かしき…あの銀の鉤爪と同じ形態だったんだ。
それを詳しく探査する前に光の度合いが強まり、気づいた時には龍も瘴気も、複数の邪気も殺気も…消え失せていた。
あるのは只…鈍色の空と果てなく拡がる荒野のみ。

