シンデレラに玻璃の星冠をⅢ



「それは僕の願望でもあり、芹霞を守る肩書きだということは判っていても…だけど、正直手放しでは喜べない」


"お試し"を決行したのは僕。

"恋人"を請うたのも僕。


「櫂は今…どうしているんだろうね」


櫂が奪うという表現を使ったということは、芹霞は僕のものだとみなしているのだろう。


だからといって、櫂に…僕と芹霞は恋人として認められているとか、恋人として甘い時間を過ごすことが許されている…と思ってはいけないことくらい、僕も心得ている。


僕には、これからしないといけないことだってある。


「きっと…本気で芹霞を奪いに来るよ、あいつ…。僕、やばいよね…。かといって、"清く正しく美しく"を崩せば…芹霞に泣かれるし。そうなったら、僕…今度こそ櫂に殺されるかもね」


「……。玲様…何だか嬉しそうですね…?」


「嬉しいというか…あいつが本気になると思うと、僕…ぞくぞくとして興奮してしまうんだ。昔からなんだけれど……武者震いっていうのかな」

僕は笑う。


「僕と櫂の関係が何であれ、同じ血は引いているから…共鳴のようなものだと思うんだけれど。

こんなこと、僕が言ってはいけないとは思うけれど…あえて言うのなら、わくわくするんだ。

櫂がどう出るのか。

何をしてくれるのか。

きっとあいつもこの高揚感を、感じているはずだ。

これは…戦場に行こうと決めた男の性(さが)、とでも言うべきものなのかな。それとも好戦的な紫堂の血、なのかな」


「玲様…」


「僕はね、決して櫂に許されたとは思っていない。そこまでおめでたく考えられるような男じゃないよ。

お前だから言うけど――

本当はね、櫂の前からも芹霞の前からも…そしてお前の前からも。綺麗さっぱり姿を消す気でいたんだよ、僕は」


見上げる白い天井が、曇って見える。


「そんな僕を…櫂は、"信じる"という言葉で縛った。

僕が欲しくて仕方がない、だけどもう永遠手に入ることが出来ないと思った"魔法"の言葉で、僕を…縛ったんだ。

戻ることも逃げることも…許さず」


僕は微笑んで桜を見た。


「僕はね、逃げちゃいけない。

強くなった櫂の相手をしたい。

櫂を認めさせたい。

今度こそ、正々堂々と…僕は芹霞を手に入れたいんだ」


「玲様…」