「別にそんな展開望んでいた訳じゃないし、それより先にすべきことはあるの、十分過ぎる程よくよく判っているんだけどさ…、先にそう言われてしまうとさ…なんかこう、切ないんだよね。僕はこれから何処に向かって行けばいいんだろう……みたいな、途方に暮れた気分なんだよね…」
ぼすぼす、ぼすぼす。
「今までの経験は役に立たないし。第一僕…求めずとも勝手に求められて、流されるままだったから、そういうの…深く考えてこなかったんだ…」
ぼすぼす、ぼすぼす。
「間違いなく純愛なんだよ? まあ…罰だと忍べば良いんだけれど…なんかこう、ほら…"お預け"されている気分で。"待て"ほどの、待てば確実にありつける未来が目の前に見えてこないというか…。僕…煌の遠戚になりたくなかったのに…」
「犬、ですか…?」
僕は顔を上げた。
「違うよ!!! 僕はやたらめったら発情してないんだよ!!!」
そうむくれると、桜は腑に落ちないというような顔で首を傾げた。
ぼすぼす…、
「何だか…全力投球で盛れる煌が、羨ましい気にもなってきてさ…」
「はあ…」
「僕さ――…」
ぼすぼす、ぼすぼす。
「凄く、不器用みたいだ」
そして俯いた。
「大丈夫かな…。僕、櫂の攻撃凌げるかなあ…」
本気の櫂に立ち向かうためには、本気で相手しよう。
そう思えど――
僕も案外ヘタレで。
我が身が哀しくなる。
「玲様…」
桜が、目をくりくりさせながら僕に声をかけた。
「桜は、恋愛事情はよく判りませんが…先刻までの妙に思い詰められお顔が強張っていたのが、改善されたようで…安心しました」
強張っていた?
「そんな顔してたの、僕」
「…そのように見えました。肩に力が入りすぎているというか…。それでいて儚げで消え入りそうで…。今なら…少し安心出来ます…。芹霞さんの…力なんですね」
桜は…悔しそうにも見える、複雑な笑いを浮かべた。
「ねえ桜。今更なんだけれど…いいのかな、僕…芹霞と…恋人やっていて」
僕は天井を見上げた。

