シンデレラに玻璃の星冠をⅢ

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「……玲様、何をなさって?」


自分を立て直して帰ってきた桜が、ベッドに1人座る僕を見るなり不審げな声を出す。


「……ん?」


語尾を上げた僕。


「桜が出かけていた間…何かありましたか?」

「……ん~…」


語尾を下げた僕。


そして右手拳で、左手にある枕を…ぼすぼす叩き続ける。


「玲様…?」

「ん……?」


ぼすぼす、


「何か…あったんですか?」

「ん……」



ぼすぼす。



何だか――


「櫂と…煌の気持ちが判った気がする」

「え?」


「近くに居るのに手が出せない気持ち。僕さ…それは芹霞がどうのというよりも、あいつらが特定の女を作ったことがない、経験不足からくる不器用さが祟っていると思ってたんだ」

「はあ……」


「唯一の…経験者がさ…」


ぼすぼす、



「初心者に――

先制…くらっちゃった」



ぼすぼす、ぼすぼす。


「聞こえてくるだろ、風呂に行った芹霞の歌声…」

「はい。あれは……?」


「宝塚の"すみれの花咲く頃"。

"清く正しく美しく"だってさ…」


ぼすぼす、ぼすぼす。


「僕と芹霞は、普通の…熱烈相思相愛恋人関係じゃないのも判ってるし、そういうのを僕が期待しちゃいけないのも判っているけどさ…」


ぼすぼす…、


「罰、なのかな…これは…」


ぼすぼす、ぼすぼす。


「僕…人よりそういう欲求がない、淡泊すぎる…草食系だと思っていたんだけれどさ…」


ぼすぼす、ぼすぼす。


「相手が芹霞に限っては、そうでもないみたいなんだよね…」


ちらりと桜を見ると、桜は大きく頷いた。


「あ、はい。それは見ていればもう…」


そうだったらしい。


「桜……」


ぼすぼす…、


「何だろう…」

この遣り切れなさ」


ぼすぼす、ぼすぼす。