芹霞は念を押すように、ゆっくりと言った。
「玲くんは…そういうことしないんだね?」
「しない」
先程の強張った表情とは別に、芹霞の顔に何か微細な変化が生まれている。
それを吉兆だと信じて、縋るように僕は更に真摯な面持ちを向けて、力強く断言する。
「したくないんだね?」
「うん」
「本当だね?」
「本当だ。信じて欲しい」
信じてくれ!!!
僕との関係を…先の見えるものとしないでくれ!!!
芹霞は――
じっと僕の目を見つめて…微笑んだ。
柔らかく、安心したように。
「そうだよね。玲くんはそんな人じゃないよね」
ああ、だから僕は。
誤解が解け、そして僕との未来を――
「玲くんは――
清く正しい人だものね」
「………」
今度は違う…嫌な予感を覚えた僕。
何か…また話の筋が曲ったように思えたんだ。
納得して、自己完結しているのは芹霞だけで…僕にとっては何やら好ましくない方向へと道が繋がったように思えて仕方が無かった。
「そうだよね、玲くんは…何処かの発情犬と違うし、礼節弁(わきま)えた大人だし。あはははは、玲くん、いっつも際どいから…そういうことするのが好きなのかなって思わなくもなかったけど…玲くん実は"したくない"人だったんだね。
あたし、いつもからかわれてただけだったんだ、やっぱり」
芹霞との直前の会話を頭で反芻してみる。
"僕はそういうことはしない。したいとも思わないし、絶対しない"
"信じて欲しい"
それは…芹霞以外のことについてで。
芹霞が相手なら僕は――。

