驚愕と怯えに…一瞬、俺の手から力が弛んだ時、レイが俺の指を囓って、俺の手から地面に飛び降りた。
「いたいけな僕に、何するんだよ!! 窒息しちゃうじゃないか。ふぅ~ふぅ~。ああ…この酸素が"かれいしゅう"っていうのが嫌だけど、背に腹は変えられないね。"ぴちぴち"の僕は辛いけど、我慢するよ」
「「加齢臭!!?」」
レイが放つ、特定の単語に再度敏感に反応し、目を見開く情報屋とクマ。
「二度も何を言うよ!!? 黙れ、このチビ!!! 放り捨てるぞ!!?」
煌が怒気を含んだ声で、レイを威嚇した。
「な、何だよ…皆して怖い顔で。………。……ああそうか、判ったよ。僕の愛を…横取りする気だね。駄目だよ。僕の胡桃は上げないからね!!」
「誰がお前の胡桃を狙うって!! チビ、謝罪!!! あのおっさん達に謝罪!!」
煌…。お前も、堂々と"おっさん"と言っているんだが。
それに気づいているのは、俺だけのようだ。
「嫌だね。何で僕が謝らないと…「チビ!!!」
「だって僕は本当のことを…「胡桃…粉々にするぞ?」
「!!! そんなことさせは…「俺と櫂と小猿。3人相手で胡桃守れるか?」
すると言葉に詰まったらしいレイは、やがて、とてとてと重い足取りで…情報屋達の処に赴いて。
「……ごめんね?」
斜めに見上げて、謝罪の言葉を口にした。
「ワンコが…ワンコの意地にかけてリスを従えた…」
そう翠が感嘆の声を吐く中、レイはクマのズボンの裾をくいくいと手で引いて、
「ごめんね、"おっさん"…」
言葉の最後に、2組の男達の目に何かが横切ったが、
「しゃーない。こんな小動物にうるうるされた目で見られたら、"アダルト"な男としては、懐の大きさを見せないとな。がはははは」
そしてレイは、今度は情報屋のズボンを引いた。
「ごめんね…"アホなおっさん"。僕の胡桃がかかっているから…許してね。アホだから、許してくれるよね?」
「あのチビ…やっぱ阿呆タレだ」
煌が頭を抱えてげんなりとしたけれど。
「何でひーちゃんだけ、扱いが酷いんや!! とは思うけど、レイはん…愛らしいお顔してはりますものな。流石にひーちゃんも…」
そして情報屋はクマと顔を見合わせ、
「「よしとしよう」」
情報屋とクマの声が重なった。
………。
何てアバウトな。
そして――
「ふふん。流石は僕だね。お前が出来ずとも、この場は僕が治めてやったよ。お前もっと、空気を読んで仲裁する手法を勉強しろよ。ま、僕から学ぶといいよ」
レイは悠然と大股で歩いてきて、また煌の頭上の飛び乗り、カリカリ胡桃を囓り始めた。
………。
何だかな…。
まあ…動物だし。
俺は苦笑いをするしかなかった。

