「筋肉自慢も…終了だ。情報屋…素晴らしい筋肉は判ったら、とりあえずいつまでもそのポーズを見せつけるのはよしてくれ」
「櫂はんが見たいと言わはったんや。いい男の肉体美を」
事実までねじ曲げられる。
「俺は、背中を見せてくれと言ったんだ」
それなのに。
人間とリスの筋肉自慢から始まって、どうして話が脱線するんだろう。
情報屋の誘い水に、煌と翠が乗りやすいからだろうけれど。
だからこそ、五皇と思えぬ気安さがあるんだろうけれど。
「ふん。判ってないね。イイ男は筋肉だけではなく、愛の深さも証明するものさ。駄犬、僕を"巣"に早く戻せよ。さっきお休みしていた分、急いでカリカリしなくちゃ…。求愛の胡桃…芹霞への胡桃。うふふふふ」
カリカリカリカリカリ…。
「どや? 櫂はんが見たいものは…あったかいな?」
そして情報屋が見せた背中には――
「ああ…」
黄の印が、深い傷痕となって刻まれていた。
煌が渋い顔をして頭を掻く。
刻まれた五皇の印。
同時に…肌にまだ残る凄惨な傷跡も目にした。
抉られたような傷痕が無数。
尋常ではない過去を持つことを露呈する、情報屋の身体。
「じゃ、服を着るで?」
前を向けば――
心臓の位置にも、大きな傷。
首には、俺と同じ黒い薔薇の痣。
――裏世界に行けば、判るやさかい。ひーちゃんとお・そ・ろ。
それ以上は、げんなりして聞けなかったことを思い出す。
情報屋の身体に刻まれたものは、恐らく…情報屋にとっていい思い出はないものだろう。
消えぬ傷は、心の傷ともなりえるはずだから。
それを、求めに応じて見せてくれたことは、感謝しないといけない。
闇の部分を見せてくれた事に関しては。
「失礼した。緑皇」
精一杯の礼儀を尽くし、足を揃えて頭を下げると、
「もう退職したんや。これからは副業を本業として、目一杯荒稼ぎして、櫂はんからも金を搾り取るさかいに、よろしゅう」
五皇の威厳など何もないような台詞で、笑って挨拶された。

