シンデレラに玻璃の星冠をⅢ



「筋肉自慢も…終了だ。情報屋…素晴らしい筋肉は判ったら、とりあえずいつまでもそのポーズを見せつけるのはよしてくれ」

「櫂はんが見たいと言わはったんや。いい男の肉体美を」


事実までねじ曲げられる。


「俺は、背中を見せてくれと言ったんだ」


それなのに。

人間とリスの筋肉自慢から始まって、どうして話が脱線するんだろう。


情報屋の誘い水に、煌と翠が乗りやすいからだろうけれど。

だからこそ、五皇と思えぬ気安さがあるんだろうけれど。


「ふん。判ってないね。イイ男は筋肉だけではなく、愛の深さも証明するものさ。駄犬、僕を"巣"に早く戻せよ。さっきお休みしていた分、急いでカリカリしなくちゃ…。求愛の胡桃…芹霞への胡桃。うふふふふ」


カリカリカリカリカリ…。


「どや? 櫂はんが見たいものは…あったかいな?」



そして情報屋が見せた背中には――



「ああ…」



黄の印が、深い傷痕となって刻まれていた。


煌が渋い顔をして頭を掻く。


刻まれた五皇の印。


同時に…肌にまだ残る凄惨な傷跡も目にした。

抉られたような傷痕が無数。


尋常ではない過去を持つことを露呈する、情報屋の身体。


「じゃ、服を着るで?」


前を向けば――


心臓の位置にも、大きな傷。

首には、俺と同じ黒い薔薇の痣。


――裏世界に行けば、判るやさかい。ひーちゃんとお・そ・ろ。


それ以上は、げんなりして聞けなかったことを思い出す。


情報屋の身体に刻まれたものは、恐らく…情報屋にとっていい思い出はないものだろう。

消えぬ傷は、心の傷ともなりえるはずだから。


それを、求めに応じて見せてくれたことは、感謝しないといけない。

闇の部分を見せてくれた事に関しては。


「失礼した。緑皇」


精一杯の礼儀を尽くし、足を揃えて頭を下げると、


「もう退職したんや。これからは副業を本業として、目一杯荒稼ぎして、櫂はんからも金を搾り取るさかいに、よろしゅう」


五皇の威厳など何もないような台詞で、笑って挨拶された。