「玲くん…。ミコさんとの子供…」
芹霞は真っ直ぐに僕の顔を見た。
「玲くんは…そういうこと…するの?」
僅かに見せた表情は…"不快"。
「子供出来るようなこと」
嫉妬という明確な形でなくてもそれは、芹霞にとっては見過ごせない…そんなささくれだった感情であるように僕には思えて。
例えそれが、第三者的な一般的な感情であったとしても、
"あたしと言う恋人がいても"
そんな言葉で終結するのがしっくりくるような…"女"というものの心を見せられた気がしたんだ。
いつもいつも芹霞は言いたいことを呑み込んで、おかしな方向に思い込む。
だとしたら――。
僕にその心の内を見せようとしてくれることを、
その前向きな変化を、
「……したくない」
僕は誤魔化して曖昧にしてはいけない。
僕だって、僕の決意を…僕の真情を返すんだ。
僕達には…今まで会話がなさすぎて、すれ違いがありすぎた。
僕はあんなに…"お試し"を本物にしたいと芹霞に訴えて、愛の表明を言葉や行動で示していたのに、僕と久遠が…櫂を取り合っている三角関係の図が、芹霞の頭に展開されていたなんて…もう驚きを通り越して泣きたかった。
「したくないに決まっているじゃないか。
僕は…芹霞を裏切らない」
笑みすら浮かべず、ひたすら真剣に。
僕は視線に…真情を乗せた。
「僕は人に強制されても、他の女に手を出すような軽い男じゃないし、僕は…君に、芹霞に真剣なんだ」
これから…僕と当主との戦いが始まる。
それは免れない問題だ。
だからこそ――
「僕はそういうことはしない。
したいとも思わないし、絶対しない。
それははっきりと誓える」
芹霞には信じていて欲しい。
絶対に。
僕の抗いを、この決意を。
信じて貰うことが、今の僕の力になるんだ。

