「五皇は…ただ"選ばれた"だけの仲。他の五皇の為に心を砕く、そんな感傷的な心は持ち合わせていない」
俺は、アホハットの胸倉を掴んだ。
「それはお前や氷皇、久涅だけだろ!!? 緋狭姉は違う。緋狭姉は!!!」
緋狭姉は――
「俺を救った!!! 俺だけじゃねえよ、櫂も玲も桜も芹霞も…体張って、ずっとずっと…救い続けてくれてるんだよ!!! 緋狭姉を非情みてえに言うな!!!」
俺にとっては、生涯頭が上がらねえ…神の人なんだ。
――如月煌と名づけよう。
緋狭姉が、俺を人間として生かしてくれたんだ。
一生、俺の尊敬する師匠なんだ。
「だから皆!!! 久遠すら!!! 緋狭姉を助けようと必死じゃねえか。そんな緋狭姉を窮地に追い詰めたのは誰よ!!? 背中を突き刺したのは誰だ!!?」
緋狭姉が刺されて…沈んでいった、あの場面を思い出す。
意識的に考えないようにとしていた、抑圧してきた怒りが沸き起こる。
例え事前にアホハットと示し合わせていたとしても、俺の目の前で…最強の紅皇が崩れたんだ。
しかも…俺達を救おうとしてだ。
ああ――…。
激情が体の奥底から、駆け上ってくる。
泣きたいのか怒りたいのかよく判らねえけれど、語彙力のねえ俺は、それら全ては言葉には出来ねえ。
それがもどかしくてたまらねえけれど。
俺が言いたいのはただ1つだけ。
「緋狭姉だけは、
――愚弄するな!!!」
それだけだ。
緋狭姉を、汚すのは赦さねえ。
黙って見過ごすことが出来る程、俺は大人でもねえし、出来た人間ではねえから。
黙らないのなら、渾身の力で黙らせてやる覚悟で。
例えそれが、五皇の力を持つ…俺より遙かに強大な相手だろうと。
俺は威嚇のように、余裕めいて冷笑するアホハットに唸った。
その時――
「煌」
すっと…黒い影が俺の横に出来て。
「鎮めろ」
櫂が、俺の肩を抱く。

