シンデレラに玻璃の星冠をⅢ



「五皇の履行…それは氷皇の言葉にもあった。何を履行している?」


「…約束だ」

「約束?」


「五皇には…様々な権力を与えられている。


しかし――

権力という餌で、飼われているだけだ」


アホハットは…何を言い出したのだろう。


その顔は能面のように無表情で、思わずぞくりとする。


今までの…あの軽薄な空気は何処にもねえんだ。



「五皇は――

ゴミ以下に扱われた存在だ」



口から紡がれた言葉は、信じがたいものだった。



ゴミ以下…?


俺の脳裏には、己の色を主張した外套を翻し、堂々たる風情で東京を闊歩する…氷皇や、緋狭姉の姿を思い出す。

ただ…死んだ白皇の正式な五皇姿はみてねえし、黒皇たる久涅はチンピラ紛いの派手好きで、元々の性格が最悪だから…その2人の五皇の実体は判らねえけれど。


ゴミ以下とは思えねえ。

何より、元老院が五皇に権力を与えているんだから。


「なあ…ただの元老院直属の部下にしか過ぎなかった五皇が1人の氷皇は、元老院への格上げが承認されてんだぞ? ゴミなら…そんな事態はありえねえだろ」


俺がそう言うと、アホハットは…嘲るような嗤いを見せた。


「氷皇は…履行を可能にする為に動いている。"孤高"で」


また、"履行"だ。



「……。それは、緋狭さんの背中の印と関係があるのか?」


櫂が言った。



「ああ。五皇は皆、背中に"黄の印"を持つ。約束を…忘れぬように。

その枷がある為に五皇は縛られる。


だが――

その枷がなければ、五皇はこの世にはいない」



"この世にはいない"



――!!!!


「この世って…まさか既に死んでいるとか!!?」

「違う」


否定してくれて、安心した。

氷皇はどうでもいいけれど、緋狭姉が…妹共々死んでいたなんて、洒落にもなんねえ。


「約束によって、五皇は"生かされて"いるという意味だ。時期が来たんだ。五皇が…約束を守り、履行しないといけない時期が」


「お前が…緑皇を降りたというのも、履行なのか?」


アホハットは肯定するように、含んだ笑いを見せた。


「誰との…約束だ?」


櫂の問いに、アホハットは言った。



「黄」



――と。