シンデレラに玻璃の星冠をⅢ



「…今はしないよ」


そして口付けたのは――


「心臓が…落ち着いて、君が女として僕を欲してくれたら…その時に頂戴ね?」


あたしの左胸に大きく残る…傷。


熱い柔らかなモノが、そこに宛てられた。


「玲くん…そこは…や…」


醜い手術痕残るその部分に、玲くんは唇をあてて動かない。


精神的な悍(おぞま)しさと、肉体的な甘美さと。

その感触があたしの許容範囲を超えていて、思わずのけぞり遠ざかろうとしたあたしだったけれど、玲くんはしがみつくように背中に両手を回すと、より一層密着してくる。


「思い出すね…入院。あの時、世界は…僕達だけのものだった」


どこか懐かしむような口調を聞きながら、


「これは…僕だけが知る、僕だけの聖域だ。他には触らせない。もう…誰にも見せやしない」


あたしは得も言えぬ感覚に身を捩るばかりで。


「あの時…我慢しなければ、何か変わっていたのかな…」


そんな哀しげな声が聞こえたと同時に…胸が熱くなってきた。

玲くんの唇から…何かが流れ込んでいる気がする。

これは…。


「僕だって…君を守れるよ。ネコに出来て僕に出来ないことはない。だから僕に君を守らせて…?」


ネコ…?


「回復結界…唇から局所的に発動出来るようになってよかったな…ふふふ」


結界ですと!!!?


まあ…そりゃあ、あれです。

一度は玲くんとその…覚悟を決めたとはいえ、真似事…みたいなこの現状は耐え難いのです、はい。

驚愕と恐怖と羞恥、それから気持ちよさに…意識が遠のきそうだ。


それに鼻が…。


「………。それから、僕を赤く染めないでね。染められたら…一緒にお風呂に入って洗って貰うから。僕の身体の隅々までね。あ、僕も…王様ネコもご満悦だった指で、色々なトコロ丁寧に洗って上げる」


………。


やばい。

そっち想像した方が鼻が…。


煩悩滅殺!!!!


我慢出来るはずだ。


限界突破!!!


「ん……安心する。芹霞から心臓の音が聞こえると。凄く安心して…。……」


「玲くん…?」

お返事がない。


代わりに寝息が聞こえてきた。