「ち、違うから。別にやましいことは…」
「君がしなくても、"された"んだろう!!?」
芹霞は静かに溜息をついて。
「現われた久涅を計都が迎えに来た。
ただそれだけだよ。別にやましいことは…」
だけど微妙に目が泳ぐ芹霞。
………。
君の演技は下手だよね。
言えばいいじゃないか。
不可抗力だったって。
誰も芹霞を浮気者と罵っているわけではない。
だけど君を詰る前に。
「ごめんね…1人にしてしまって…」
僕は芹霞を抱きしめた。
そう、それが一番恥じ入ること。
過信し過ぎていた、僕は芹霞の危険を察知出来ると。
「玲くん……」
芹霞が、僕の背中の服地をぎゅっと掴んで。
「去り際…久涅に言われたの…。
サンドリオン…
夢の国に行く為の、運命の時間が来るって」
芹霞の言葉に…
「サンドリオン…?」
僕と由香ちゃんと顔を見合わせる。
「"心"を奪われるなって…」
僕達が知るサンドリオンは、黄色い蝶関係の七不思議。
「久涅は…何か関係在るのか?」
少なくとも、"サンドリオン"という単語に意味があることを知っている。
黄色い蝶は目を抉る。
しかし目ではなく心の奪取を、警告しにきたというのか。
久涅が黒皇だとしたら。
芹霞の前に現われたその動きは必然的事象なのか。
それとも、ただ単に…芹霞への恋慕故のことか。
そしてどうして僕は、久涅の気配を悟れないのか。
S.S.Aで宝石店から出た芹霞を追いかけ探し回っていた時、久涅が一緒にいて僕は驚いたことを思い出す。
まだ僕は、久涅の気配を察知出来ないというのか。
代わり映えなく、久涅の気を感じられない自分にイライラしてくる。
力の差を見せつけられているようで、無性に悔しくて。

