驚いた芹霞は、クオンを落してしまったようで…やはり凄い格好をしてクオンは落ちたけれど、何事もないようにすました顔で座り直る。
クチュン。
クチュン。
くしゃみは止まらないらしい。
校舎内は暖房が利いていて、寒いわけでもない。
花粉症の季節でもないというのに。
芹霞の首筋には…不自然に白くカサカサとしたものが張付いていた。
まるで芹霞の肌に鱗ができたよう。
「何…これ」
僕は、ごくんと唾を飲み込んだ。
指先で触ってみたら…
………。
「ご飯粒の……痕?」
「ニャア!! …クチュン」
クオンが得意げに鳴いて、またくしゃみをした。
「………」
僕はその首筋の忌々しい"防御膜"を払って、僕の赤い痕を露出させながら、もう一度芹霞に聞いた。
ニャアニャア不満げな声が聞こえてきたが、完全無視だ。
ネコの浅知恵よりも、僕は匂いの方が気になるんだ。
「芹霞、誰と会った?」
芹霞の頬を両手を添えて固定して、真っ直ぐ見つめて聞いたら…逃れられないと観念したかのように芹霞が小さな溜息をついた。
少しだけ怯えたように目が細められ、そして困ったような顔をして、僕を見て言ったんだ。
「……久涅」
そう小さな声で。
「久涅だって!!?」
僕は思わず声を荒げて、気を高めてその気配を伺うけれど。
それらしき気配は何もなく。
「もういないよ。計都と…行っちゃったから」
「「計都まで!!?」」
由香ちゃんの裏返った声が重なった。
「僕も朱貴も居たのに…気配を悟られずに…現われたなど…」
しかし、考えて見れば。
芹霞が消息不明の30分間程。
やけに朱貴はそわそわして体育館の外に出ていなかったか?
朱貴は感じていたのかも知れない。
僕には感じ得なかった、異質な者の気配を。
「芹霞、身体は大丈夫なの!!? 何かされなかったの!!?」
「………うん」
何で、返事に躊躇いがあるんだ!!?
まさかそのシトラスの香りは、久涅?
もしそうだとして、芹霞の身体から漂うと言うことは…。
久涅が…芹霞を抱きしめたとか!!?
それとも…計都か!!?
僕の頭の中には、見えぬ男と抱き合う芹霞が居て。
「………っ」
その嫉妬に、息が詰まる。

