シンデレラに玻璃の星冠をⅢ



驚いた芹霞は、クオンを落してしまったようで…やはり凄い格好をしてクオンは落ちたけれど、何事もないようにすました顔で座り直る。


クチュン。

クチュン。


くしゃみは止まらないらしい。


校舎内は暖房が利いていて、寒いわけでもない。

花粉症の季節でもないというのに。


芹霞の首筋には…不自然に白くカサカサとしたものが張付いていた。

まるで芹霞の肌に鱗ができたよう。



「何…これ」



僕は、ごくんと唾を飲み込んだ。



指先で触ってみたら…



………。




「ご飯粒の……痕?」



「ニャア!! …クチュン」


クオンが得意げに鳴いて、またくしゃみをした。


「………」


僕はその首筋の忌々しい"防御膜"を払って、僕の赤い痕を露出させながら、もう一度芹霞に聞いた。


ニャアニャア不満げな声が聞こえてきたが、完全無視だ。

ネコの浅知恵よりも、僕は匂いの方が気になるんだ。



「芹霞、誰と会った?」


芹霞の頬を両手を添えて固定して、真っ直ぐ見つめて聞いたら…逃れられないと観念したかのように芹霞が小さな溜息をついた。


少しだけ怯えたように目が細められ、そして困ったような顔をして、僕を見て言ったんだ。


「……久涅」



そう小さな声で。


「久涅だって!!?」


僕は思わず声を荒げて、気を高めてその気配を伺うけれど。

それらしき気配は何もなく。


「もういないよ。計都と…行っちゃったから」


「「計都まで!!?」」


由香ちゃんの裏返った声が重なった。


「僕も朱貴も居たのに…気配を悟られずに…現われたなど…」


しかし、考えて見れば。

芹霞が消息不明の30分間程。


やけに朱貴はそわそわして体育館の外に出ていなかったか?

朱貴は感じていたのかも知れない。


僕には感じ得なかった、異質な者の気配を。


「芹霞、身体は大丈夫なの!!? 何かされなかったの!!?」

「………うん」


何で、返事に躊躇いがあるんだ!!?


まさかそのシトラスの香りは、久涅?

もしそうだとして、芹霞の身体から漂うと言うことは…。


久涅が…芹霞を抱きしめたとか!!?

それとも…計都か!!?


僕の頭の中には、見えぬ男と抱き合う芹霞が居て。


「………っ」


その嫉妬に、息が詰まる。