シンデレラに玻璃の星冠をⅢ



シャワー室は体育館の横の更衣室の中にある。

簡素なものだけれど、汗を流し落すには十分だ。


熱いシャワーが終われば、更衣室内の椅子に座り、持参していた芹霞のおにぎりを頂く。


「おいしい…」


1口食べただけなのに、何から何までおいしい。

芹霞が作ったからという理由が大きいけれど、このご飯自体…いいお米使っているんじゃないか?

この冷めてもふっくらのご飯…さっき皆と食べていたおにぎりのものじゃないよね。


………。

僕だけ…特別なの?


「……っ。やばい…嬉し過ぎる」


僕だけということが、僕の顔を歓喜に弛ませる。

芹霞を目茶苦茶に抱き潰したい程に、嬉しくて堪らない。


「……可愛い…」


マツゲまでついた可愛いリスのおにぎり。

にっこりと笑った顔が可愛くて、食べるのが勿体ないけれど。

だけど芹霞が僕に作ってくれたものだから、1粒も残したくない。


ゆっくりゆっくり噛みしめて食べる僕のおにぎり。

無くなってしまうのがやはり惜しくて仕方が無かったけれど。


何よりもおいしくてたまらなかった。

目の奥がじんわりと熱くなってきて、僕は慌てて目を擦る。


最近涙もろくて、女々しすぎるのは自覚しているけれど。

こうした芹霞の不意打ちには、どうしようもない。


膨れあがる感動や愛情は…理性を超えてしまう。


「一緒に食べたかったな、芹霞の手作り…」


今度は僕が作って上げようか。

芹霞は何にしよう。

可愛いウサギさんにしようかな。


思わず笑みが零れてくる。

芹霞もこうやって僕みたいに、幸せを感じてくれたらいいな。


「ごちそうさまでした!!」


僕の心はほくほくしたまま、体育館を後にして…第二保健室へ駆けた。


「ただいま!!」


ドアを開けて中に入れば、由香ちゃんが実に困った顔をして僕を見た。


「お帰り師匠…」

「お帰りなさいませ、坊ちゃま…」


百合絵さんまで浮かない顔。


「どうしたの? あれ、芹霞は?」


そう聞くと、由香ちゃんは無言で指を指した。


窓際で、空をぼーっと見上げている芹霞。


手には逆さ吊りされたクオンが暴れて、芹霞の手を引っ掻いているようだけれど、芹霞は上の空。


クチュン。

クチュン。


しかもクオンからは、可愛らしい…多分くしゃみだろうが、連続して聞こえてくるけれど、芹霞はぼーっと遠い処に意識があるようで。

「ただいま、芹霞。…芹霞?」


ゆっくりと黒い瞳が僕を見て。


「お帰りなさい、玲くん」


微笑んだ。

いつもの芹霞だと思うけれど、何だかぎこちない気がしたんだ。