シャワー室は体育館の横の更衣室の中にある。
簡素なものだけれど、汗を流し落すには十分だ。
熱いシャワーが終われば、更衣室内の椅子に座り、持参していた芹霞のおにぎりを頂く。
「おいしい…」
1口食べただけなのに、何から何までおいしい。
芹霞が作ったからという理由が大きいけれど、このご飯自体…いいお米使っているんじゃないか?
この冷めてもふっくらのご飯…さっき皆と食べていたおにぎりのものじゃないよね。
………。
僕だけ…特別なの?
「……っ。やばい…嬉し過ぎる」
僕だけということが、僕の顔を歓喜に弛ませる。
芹霞を目茶苦茶に抱き潰したい程に、嬉しくて堪らない。
「……可愛い…」
マツゲまでついた可愛いリスのおにぎり。
にっこりと笑った顔が可愛くて、食べるのが勿体ないけれど。
だけど芹霞が僕に作ってくれたものだから、1粒も残したくない。
ゆっくりゆっくり噛みしめて食べる僕のおにぎり。
無くなってしまうのがやはり惜しくて仕方が無かったけれど。
何よりもおいしくてたまらなかった。
目の奥がじんわりと熱くなってきて、僕は慌てて目を擦る。
最近涙もろくて、女々しすぎるのは自覚しているけれど。
こうした芹霞の不意打ちには、どうしようもない。
膨れあがる感動や愛情は…理性を超えてしまう。
「一緒に食べたかったな、芹霞の手作り…」
今度は僕が作って上げようか。
芹霞は何にしよう。
可愛いウサギさんにしようかな。
思わず笑みが零れてくる。
芹霞もこうやって僕みたいに、幸せを感じてくれたらいいな。
「ごちそうさまでした!!」
僕の心はほくほくしたまま、体育館を後にして…第二保健室へ駆けた。
「ただいま!!」
ドアを開けて中に入れば、由香ちゃんが実に困った顔をして僕を見た。
「お帰り師匠…」
「お帰りなさいませ、坊ちゃま…」
百合絵さんまで浮かない顔。
「どうしたの? あれ、芹霞は?」
そう聞くと、由香ちゃんは無言で指を指した。
窓際で、空をぼーっと見上げている芹霞。
手には逆さ吊りされたクオンが暴れて、芹霞の手を引っ掻いているようだけれど、芹霞は上の空。
クチュン。
クチュン。
しかもクオンからは、可愛らしい…多分くしゃみだろうが、連続して聞こえてくるけれど、芹霞はぼーっと遠い処に意識があるようで。
「ただいま、芹霞。…芹霞?」
ゆっくりと黒い瞳が僕を見て。
「お帰りなさい、玲くん」
微笑んだ。
いつもの芹霞だと思うけれど、何だかぎこちない気がしたんだ。

