サンダーボルトアタック……。
何度か口で反芻してみた。
抽象的な名前より、単純明快でいいかもしれない。
「それにしようか」
僕はにっこりと笑う。
「早く芹霞にお披露目したいな!! 芹霞きっとびっくりするぞ~。あ、玲。それを準備室に運んで最後だろ? あたしがしとくから、お前は少しでも早く芹霞の元に行ってや……っくしょん!!」
汗が引いて身体が冷たくなってしまったのか。
僕でさえうすら寒く感じて服を着たんだ。
「紫茉ちゃん、ここは僕が片付けるから、紫茉ちゃんは早くシャワーに。風邪引いたら…」
「いやいいよ、あとはこれだけ…っくしょん!!」
その時、宙に赤色が飛び――
紫茉ちゃんの身体を覆ったんだ。
それは…。
「紅皇の…外套?」
飛んで来た方向を見れば、いつの間にか体育館に戻って来た朱貴で…どうやら紫茉ちゃんに着せる為に投げたらしい。
紫茉ちゃんが寒がると思って…取りに戻っていたのだろうか。
体育館に来た時には既に白衣姿で、赤い外套はなかったから。
………。
紫茉ちゃんの為なら、五皇の外套も簡単に譲ってしまう朱貴。
誰もが羨む五皇の職。
それは紫堂や皇城の手すら、抑える力があるというのに。
朱貴にとっては、権威などどうでもいいんだろう。
紫茉ちゃん以上に固執するものはないんだろう。
この切ないまでに愛が滲む顔を見ていれば、どれ程朱貴が紫茉ちゃんを求めているのか判るから。
無償の愛。
見返りなど何も求めず、一方的に尽くす献身的な愛。
これだけ強くて美しい男が、求めるのは少女1人。
その少女は気づかない。
どれだけ想われているかなど。
ああ…切なすぎてやるせないよ。
欲しくて欲しくて仕方が無いという顔をしているのに、欲しいという行動を起こさない朱貴は、精神の狂いは起こさないのだろうか。
いつもいつも…芹霞に、僕が狂いそうな程にもどかしさを抱えるのは、此の身に流れる狂いの血故のことなのか。
尚更に感じる。
僕は何て不安定で脆い存在であるかを。
「着ろ」
「必要ない。お前が着ろよ」
目の前では赤い外套が、2人の間を行ったり来たりの平行線。
いつしか朱貴の必殺"ぐりぐり"が出始め、紫茉ちゃんの叫びが響く。
愛だと知らねば…ただの暴虐にしか見えないけれど。
せめて真実の愛に繋がる2人の時間を作って上げたいと思う僕は、2人の背中に向けて一礼し、そっと体育館を出た。

