シンデレラに玻璃の星冠をⅢ


「玲、休憩10分!!! 紫茉は俺と組み手続行!!!」


玲くんは…あたし達が体育館から出たことを気にしていない。

皆に先に帰って貰って、実はあたし1人でこっそり覗いていることも気づいていない。


玲くんは置かれてある大きなタオルで、身体を拭いている。

悩ましいくらいに、汗ばんで紅潮した肌に、思わずあたしは顔を赤らめた。


どこからどう見ても、玲くんは"男"で。

あの身体にいつもあたしは抱きついているのかと思ったら、今更ながらドキドキしてきた。

そんなあたしに気づかず、玲くんはひたすら…紅皇サンと紫茉ちゃんの動きを追っている。


ホントウニオッテイルノハナニ?


足元に置いたおにぎりに気づいたのか、玲くんが手を伸すのが見えた。

その手に少し躊躇があって…そして選んで口に持っていったのは普通の丸いおにぎり。


リスのおにぎりじゃない。

あたしが愛情を込めたリスのおにぎりじゃなかった。


玲くんならあたしが作ったんだと判ってくれると思ったのに、まず意識して違うものを選んだというのが、やけに心が痛んだ。


やがて紫茉ちゃんが紅皇サンがやってくると、玲くんは優しい微笑みを紫茉ちゃんに向けた。


紅皇サンが何か怒って、紫茉ちゃんが怯えて…それを優しく見つめる玲くんの目。


いつから…そんな目をするようになっていたの?



ちくん。


また、心が痛んだ。


声をかけたいのに動けない。

あの中にあたしは入れない気がして。

行ったとしても、また紅皇サンに"外野"だと追い出されるだけ。

あたしは玲くんにとって、"外野"にしか過ぎなくて。


玲くんが再び手を伸し、取ったおにぎりは巨大なおにぎり。


あたしのリスは残ったまま。


あたしが寝ていた間に何が起ったんだろう。

どうして玲くん、紫茉ちゃんにこんな打ち解けた表情をしているのだろう。


ダカラデンワニデタクナカッタノ?



「ニャアアン」


クオンの毛並みに顔を埋めた。


何だかとても寂しくて。

寂しくて…溜まらなかった。