「玲、休憩10分!!! 紫茉は俺と組み手続行!!!」
玲くんは…あたし達が体育館から出たことを気にしていない。
皆に先に帰って貰って、実はあたし1人でこっそり覗いていることも気づいていない。
玲くんは置かれてある大きなタオルで、身体を拭いている。
悩ましいくらいに、汗ばんで紅潮した肌に、思わずあたしは顔を赤らめた。
どこからどう見ても、玲くんは"男"で。
あの身体にいつもあたしは抱きついているのかと思ったら、今更ながらドキドキしてきた。
そんなあたしに気づかず、玲くんはひたすら…紅皇サンと紫茉ちゃんの動きを追っている。
ホントウニオッテイルノハナニ?
足元に置いたおにぎりに気づいたのか、玲くんが手を伸すのが見えた。
その手に少し躊躇があって…そして選んで口に持っていったのは普通の丸いおにぎり。
リスのおにぎりじゃない。
あたしが愛情を込めたリスのおにぎりじゃなかった。
玲くんならあたしが作ったんだと判ってくれると思ったのに、まず意識して違うものを選んだというのが、やけに心が痛んだ。
やがて紫茉ちゃんが紅皇サンがやってくると、玲くんは優しい微笑みを紫茉ちゃんに向けた。
紅皇サンが何か怒って、紫茉ちゃんが怯えて…それを優しく見つめる玲くんの目。
いつから…そんな目をするようになっていたの?
ちくん。
また、心が痛んだ。
声をかけたいのに動けない。
あの中にあたしは入れない気がして。
行ったとしても、また紅皇サンに"外野"だと追い出されるだけ。
あたしは玲くんにとって、"外野"にしか過ぎなくて。
玲くんが再び手を伸し、取ったおにぎりは巨大なおにぎり。
あたしのリスは残ったまま。
あたしが寝ていた間に何が起ったんだろう。
どうして玲くん、紫茉ちゃんにこんな打ち解けた表情をしているのだろう。
ダカラデンワニデタクナカッタノ?
「ニャアアン」
クオンの毛並みに顔を埋めた。
何だかとても寂しくて。
寂しくて…溜まらなかった。

