「師匠、発作起こすなよ!!? 5時まではまだあと…2時間あるからな!!?」
2時間までに…ATM、走り込まねば!!!
何回分割送金になるんだろう…。
「で、だ」
また…空気が一段と冷え込んだ。
「明日、入塾テストを受けて貰う。場所については紫茉に聞け」
氷皇は、カーテンが閉まった内部…芹霞が眠る空間に居るだろう、紫茉ちゃんを一瞥した。
「氷皇…」
口を出そうとした朱貴に、氷皇はすうっと更に冷えた目を向ける。
「口出しするな、朱貴。願い叶えたくば、お前は俺の言う通りに動け」
その剣呑な空気に緊張感が増し、朱貴は…口を閉ざした。
氷皇の威圧感は凄まじすぎる。
五皇となり存在感を増させた朱貴でさえ…この酷薄モードの氷皇には霞んで見える。
その氷皇に…僕は――…。
「しかし僕は…今外に出るわけには…」
「聞けないのか、お前は」
その眼差しが僕に向いた。
血すら凍り付かせる、非情な青色。
「俺は行けと言っている。口答えは許さん」
「………っ」
青の色彩は…鮮烈すぎた。
僕の身体の動きを縛るほどに。
しかし。
「今、僕は芹霞から離れたくない。
芹霞を守れるのは僕だけだ」
そう、桜も居ない今なら特に。
僕は氷皇に抵抗した。
「自惚れるな。お前並の力の者など、数多いる。お前は…朱貴程の力もない。守ると言えるのは、力ある者が言う台詞だ。自分の身も守れず、他人により救い出されたお前には…ただの戯言にしかすぎん」
反撃のように返った言葉は…僕には辛辣すぎた。
それでも僕は、崩れるわけにはいかないんだ。
「随分と…反抗的な目だな、玲。芹霞が櫂ではなくお前を選んだから。お前は櫂から次期当主の座まで奪えたからと…少々図に乗りすぎていないか。ん?」
「違う!!!!」
「口答えするなと言ったはずだ!!!」
ガンッッ!!!
目の前の机が、跳ね上げた氷皇の片足により…天井にぶつかり細かく砕けた。
ぱらぱらと欠片が降ってくる。
そこには、かつての姿の名残は何もなく。
この域はもう…人間の足技ではない。
鬼神だ。

