コツさえ判れば…翠は出来る。
素質がいいのに、不当に"出来ない"と思いこんでいるから出来なかっただけ。
不足しているのは自信と、経験。
出来ると信じれば、必ず出来る。
出来たものは自信となり、次なるステップになる。
望むものには貪欲であれ。
それが俺の信条。
回復結界が作れないと言えば久遠もそうだ。
あれだけ力があるのに、どうして基本にも思える回復が出来ないのか不思議だ。
きっとレグは教えたのだろうけれど、久遠は力が凄まじくて、必要性を感じないから、素通りさせていたのだろう。
要は、やる気がなかったと。
回復の力が少しでもあったならば、俺はあのクサやら"しちゅ~"やらを食わずにすんだのではないだろうか…そう思いながらも、人に頼るのはよくないと思い直して、頭を左右に振って甘い考えを吹き飛ばす。
第一、あの久遠が、俺を蘇生に加えて回復まで施してくれるか疑問だ。
こちらからの…蘇生の提案を受けてくれただけでも、奇跡的なことだとは思う。
正直最初は"面倒臭い"だの"何でオレがお前の為にそこまでしないといけないんだ"だの、"勝手にくたばれ"くらい言われる覚悟はしていたけれど、久遠はすんなりと受け入れた。
特別芹霞の頼みでもなかったのに、どんな心境の変化があったのだろうか。
ただの気まぐれにしては、久遠には負担がかかりすぎたと思う。
俺が行った為に、"約束の地(カナン)"諸共久遠達を巻き込んでしまったのは、正直心が痛い。
だからこそ、早く此処を抜けて、久遠へ借りを返したい。
俺は恩知らずではないつもりだ。
久遠にも俺の出来ることをしたい。
その誓いもあって渡した芹霞の布。
あれは俺と久遠との約束でもある。
そんな俺の回想を遮ったのは翠の悲鳴。
「うわあ、紫堂櫂。ぱっくり真ん中から左右に別れちゃってる、ブロック!!!」
横列で見れば、左右の端1ブロック分ずつ、そして真ん中2ブロック分ずつの3列分が最下段になく。
そしてその3列は、上限ラインまでの116段における上方…即ち、地上から50段以上上の方に、飛び飛びにして密集している。
特に真ん中の2ブロックの列には、高さ中央辺りにある1ブロックが、まるで突起のように飛び出しているだけで、突起を挟んで上下は空洞だ。
それ以外の列のブロックは、最下段からラインぎりぎりまで、隙間なく高く聳(そび)え立っている状況。
目の前では、落下速度が早まったブロックが、更に不利な形状を築き上げていく。

