そんな俺達にチビ芹霞は近付いてきて、にっこり微笑んだ。
「リスちゃん。目薬差してあげる」
何故に目薬?
「芹霞…僕の大好きな芹霞だ!!! 僕ね、芹霞の為にカリカリした求愛の…」
「煩悩滅殺!!!」
非常に興奮していると思われるリスを乗せたまま、俺はチビ芹霞に極力会わねえよう、走り続ける。
「芹霞が居たのに…。僕の求愛の胡桃…。ああ、僕と芹霞はロミオとジュリエット…。…しくしくしく、めそめそめそ…」
「悲劇に酔うな!!」
つーか、リスがそんな話持ち出すな。
『9秒経過しました』
ふと思った。
1秒1秒が、やけに長くねえか?
1秒が10秒以上に思えるんだが、ニノの計測は正確だろうし。
1秒で俺、此処まで多くを薙ぎ倒していけるものか?
確かに…前のゲームで、俺自身の素早さと、動体視力は上がった気はするけれど、体内時間は狂っているのか?
そして――…
『249』
『250。CLEAR』
同時に――
『10秒経ちました』
何とか…目標は達成できたようだ。
目の前に見えるは――
♪チャーチャチャチャーチャチャチャーチャチャチャー。
巨大なテトリス。
やばいくらいに、偏って積まれてある。
「僕の力で此処までこれたね!! 僕が居たから余裕だったね!! このテトリスだってチャチャチャだよ。さ、僕もブロック積み上げないとね!!」
「絶対無理。お前の体重の何百倍以上あるブロックだよ。つーか、お前変わり身の早い奴だな!! 先刻まで悲劇にめそめそしてた癖に!!」
「必要なのは、心の切り換えさ!! 僕は頭が良いんだ」
調子が良いだけだろ。
心で悪態ついた時だった。
『ワンワン、大好き』
そんな声が聞こえてきたのは。
深みのある玲瓏な声。
断じて…子供の声ではねえ。
もう驚きはしねえぞ俺は。
『ワンワン、大好き』
これはiPhoneの着ゴエ。
櫂の声だって判った時は、度肝を抜かれたけれど。
きっと合声に違いねえ。
あの櫂が、何でこんな台詞言うよ?
櫂が犬好きなんて、俺聞いてねえし。
けど…芹霞、昔櫂によく犬型のおにぎり作っていた気もする。
結局櫂が食べるの拒み、俺に回ってきたけれど。
だから俺、櫂は犬嫌いだと思ったんだよな、確か。

