「いいか、…煩悩……、滅殺…」

「ニャアアアアアン…」

「煩悩…。俺の煩悩…」


「……馬鹿犬。煩悩抑えろよ!!!」


「ニャアアアン…?」


滅殺…しなきゃ。


頭をぶんぶん横に振る。


幸先不安になった俺は、アナウンス主に声をかけた。


「朱貴質問。2人で合計200でもいいのか!!?」

『……。250なら可能だ』


ちっ。割増かよ。


「ああ、250でいい。俺達2人で250でOK」


『了解した。では攻撃250。

犬とリス、FIGHT!!』


『カウント始めます、イヌ』


「チビリス、行くぜ!!? 合言葉は!!?」

「煩悩滅殺!!!」


勇ましく飛び出した。

だけど。


『1秒経過』


「僕の胡桃~」


俺の頭から飛び降りて、とてとてと走って胡桃に向うリス。


「お前、1秒しか経ってねえんだぞ!!? 堪えろ!!」


リスを捕まえ、頭に載せる俺。

大好物以外のものへの攻撃ならば、胡桃攻撃は俺にはダメージはねえし、ごろごろ転がっていて動かねえのは大ボーナスとしか思えねえ。


「うわ、うわっ!!! 僕の胡桃を何で踏み潰すのさ、あわ、あわわわ」


リスのショックは凄まじいらしいけれど、胡桃を踏めば朱貴アナウンスのカウントは上がるから、有効なのは間違いない。


『3秒経過しました』


「髪引っ張るな!! 鉄の胡桃で頭ぶつけるな!! ぎゃあぎゃあ騒ぐな、お前も攻撃しろ!! 煩悩滅殺!! 繰り返せ」

「ぼ…んのう、ぐすっ…めっ…ぐすっ…さつ…」


………。

啜り泣きが聞こえてくれば、妙に憐憫の情がわく。


「おい、泣くなって。櫂が胡桃くれるって言ってたろ? お前しょげてちゃ切り抜けられねえだろうが」

容赦なく胡桃を踏みながら、指で…ふかふかの体をまさぐる。


『43』

『49』


「そうだよね」


突然チビリスの口調が変わって。


「僕が居ないと、馬鹿犬は突破できないものね!!」


カチン。


『56』

『68』


『5秒経過しました』


「仕方ないな。僕がお前を助けてやるよ!!」


リスは鉄の胡桃を、逃げるチビ共に投げ始めた。

一度にばたばた倒れるチビ共。

リスの攻撃は、半分自棄になっているんだろうが…命中率はいい。

いいが…なんとも釈然としねえ。


「見ろよ、僕の力!!! 凄いだろう!!」


だけど…所詮は畜生。

単純構造か。