「氷皇。くだらない戯言を吐き来たのなら、さっさと帰れ」
腕組みをした朱貴が濃灰色の瞳を凍らせながら、我が物顔で椅子にふんぞり返って座る氷皇に言った。
「あら~ん、朱ちゃ~ん? 怒っちゃや~よ? 蒼生ちゃん怖い~」
おどけたフリをした氷皇の口調は…恐らく――…
「……ちっ。あいつの口調をするな!!! 腹立たしい!!!」
あいつとは…周涅のことだろう。
朱貴は…周涅には憎悪を向けるが、氷皇には嫌悪に留まっている。
こんな腹立たしい胡散臭い男でも、周涅よりは好印象なのか。
僕にはあまり差違はないように思う。
周涅と氷皇の関係は何だろう。
違うのは色だけ。
双子と言われても、特別驚きはしないだろう。
むしろ他人と言われる方が違和感あるけれど、周涅側からしてみれば、氷皇は…憎悪の対象らしい"他人"。
同族嫌悪のような、反発心が見られるんだけれど…。
「あはははは~。そうだ、由香ちゃん。占星術(ホロスコープ)まだ?」
「あ!!!」
忘れていたらしい。
僕だって…記憶を巡らせて、今思いだした。
僕が部屋を出た後、彼女達はどうしていたんだろうか。
「全然連絡来ないからさ、iPhoneで動画や写真の撮り方判らないのかと思って、手取り足取り指導しにきたんだ。
まさかさ、俺が言ってたことを忘れてたとか、後回しにしようとか…してないよね? 此処で落ち着いて…進めているよね? 勿論、喋ってばかりでサボってなんてないよね? 何よりも優先的に急いでぱっぱとやってるよね? 俺の言ったことは即実行しているよね?」
藍色の瞳が…威圧的に細められる。
酷薄な氷皇の真の顔を、ちらりと垣間見せて。
逆らうことを許さない、それこそ氷皇までのし上がった…非情な男の脅威で。
由香ちゃんの顔から、みるみる間に血の気が引いていく。
それだけでもう、進行具合は明らかになったようなもので。
あれは…大至急しないといけないものだったらしい。
――氷皇の中では…。
勿論僕達にとっては面倒な、一番後回しにしたい事柄で。
必然の氷皇が急がせる…それは、あの占星術(ホロスコープ)作成もまた…必然の行動だとでもいうのか?
至急と言うことは、今、必要になるものなのか?
「あ~だけど君達も忙しかったもんね。それを少し考慮してあげよう。俺は優しいからね~。あとどれくらいで出来る?」
「う……」
由香ちゃんが詰まった。
全然進んでいないらしい。

