僕は…萎えた。
「あはははは~。痛々しいほっぺだね、でもリスが頬袋に胡桃入れているみたいで、可愛いよ? レ・イ・ク・ン」
強くなる為には、どんな困難なことでも逃げずに戦おうとしていたけれど、即退散したい気分になった。
ドアの奥には…久しぶりに見る青い男が、いつもの如く胡散臭い声を響かせて立っていたからで。
うんざりした。
気が滅入った。
腹立たしかったあの青い手紙の方が、顔を見ないだけまだマシだったように思えてしまった。
「ねえねえねえ。芹霞チャンに求愛のカリカリ胡桃は上げたの~? まだその可愛いほっぺに入ってるのかな? あははははは~」
カリカリ胡桃なんて知らないよ。
何だよそれ。
僕、リスじゃないよ。
――オレはワンコじゃねえ!!
何だろう、煌の気持ちがよく判る。
「さっきぶり~由香ちゃん。元気だった?」
由香ちゃんは顔を引き攣らせて、思い切り嫌そうに顔を歪めている。それを見て青い男は、とても嬉しそう。
「紫茉ちゃ~ん。レイクンがハジメテだったらきっと優しく…「氷皇、口を開くな」
朱貴は、凄い殺気を向けている。
「あららら、たーまきクーン。いいのかな、俺にそんな口いいのかな~?」
「時と場合によりけりだ」
「あははは~。君は…レイクンと同じく、余裕がないね、あはははは~」
余計なお世話だよ。
空気を読んで、さっさと帰れ、氷皇。
「歓迎嬉しいな~。朱貴ちゃん、おいしいおマメの珈琲飲みたいな~」
何で…読んでて輪に入ってくるんだよ、氷皇。
勝手にソファに座るなよ。
朱貴も、翠用の最高級豆…出さなくて良いから。
「あれ? 何でこんなに減ってるんだ?」
ぼそっと朱貴の声が聞こえた。
初めて此処に入った時、櫂達と僕ら全員、3回は飲んだから…とは言うまい。
保健室は修復しても、珈琲豆の分量は気づいてなかったらしい。
「レイクン、暇そうだね~? そこの冷蔵庫の中の林檎、俺食べたいんだよね~。1個800円ってどんな味なのかな」
何で中身まで知ってる、氷皇。
「…十五等分にして、兎さんにしてね~。あははは、レイクンのウサ耳…想像しちゃった。可愛いね~。ウサ耳に、リスの尻尾はどうだい? それで赤い服着て懐中時計を持ってさ、"あ~僕忙しい忙しい"ってパタパタ走り回ってみてよ、あはははは~」
勝手に…僕でコスプレするなよ。
不思議の国のアリスの白ウサギは…リスの尻尾してないし、なんで僕がそんな奇妙な生き物に思われないといけないんだよ!!

