シンデレラに玻璃の星冠をⅢ



「じゃあ紫堂は皇城に、その対抗策となる…電脳世界を何とか出来そうな師匠を捧げることで恩を売ろうとしているのか?」


「まあ…そうだな、簡単に言えば。しかし皇城も、紫堂の力を必要としているから…ギブアンドテイクの関係だろう」


「何で…子供なの? 何で僕自身じゃないんだ?」


僕はその疑問をぶつけた。



「子供の遺伝子は…親のものよりも、よりも強い"接着剤"の働きを見せる。それは、電脳世界の言葉を解して利用出来る…お前という存在が証明している」


「接着剤?」


「人の世界と…電脳の世界」


僕は目を細めた。


1つ…思ったんだ。


当然のように生まれた、僕の疑念。


――お前という存在が証明している。


「子供の遺伝子ということは…

僕が証明しているということは…


ねえ――…


僕の父親も…


電気の力を使えたの?」


当然の…帰結だった。


朱貴は頷いた。


「お前程ではないが。

"あること"の…研究者だった。
その研究の為に…紫堂当主の座を弟に譲った」



僕は思い出す。



氷皇のビデオを。


久涅の…父親だという、僕の父親。

あの時彼は、愛する…櫂の母親の為に、当主の座を譲ったと…言っていなかったか?



どういうことだ?


ねえ…

僕の父親は、僕の知っている…あの男性だよね?


今まで父子の交流をしたことがない僕は、懐疑的となる。


女遊びが激しくて…家庭を省みなかった父親。


その為、母の執着は異常なくらい、僕に向けられた。


助けを求めていた僕のことを見捨てて、顔を合わせもしなかった父。


僕が次期当主を排された時に、

行方不明となった父。


愛情の欠片も何もない父のことを…僕は何も知らない。


興味すら湧かなかったから。


僕の父親は研究者だった?

何の研究の?


そんなこと、聞いた覚えがない。


誰から?


それは――

僕の母親から。


そして、愕然とする。


僕は、父親の情報は…母親からしか得ていないことに気づいて。


いつからか僕は…

母の言うことだけを、真実だと思い込んでいた。


それが当然のことのように。


もしも。

もしも…僕の知らない、父の姿があるのだとしたら?


そして、もう1つの疑念。



「だったら…久涅もまた、


電気の力を持つの?」




僕の――

兄だというのなら。



「久涅は――…」



朱貴が口を開きかけた…

その時だった。


コツ、コツ、コツ…。


部屋の外に――

靴音が響いたのは。



ガチャリ。



開いたドア。


僕達は…身構えた。