シンデレラに玻璃の星冠をⅢ


「だがあえて言葉にするのなら。

羅侯(ラゴウ)は――

その名の暗黒星が最悪の悪影響を及ぼす、全ての災厄を総称するもの…とでも言えようか。その災厄を受けた時代なり、人物なりは…人々を或いはその土地を、滅亡に導く。

実体はないが、何かの肉体に根ざし、人間を虐げる側に回った時、そこで初めて人々の目は、判りやすく…"悪神の復活"と捉えるだろう。


羅侯(ラゴウ)神、黄幡神――

それは、実体のないものを1つに括(くく)る為の言葉の縛り。

そして人々は…、漠然としたものが目に見える形になった時点で、"神"とみなして勝手に信じ始める。

実際…神だなど、誰が断定できるものか。神を見たこともない、神の足元にも及ばぬ、脆弱(ぜいじゃく)な人間の分際が」


嘲る朱貴は、まるで神の伝道師のようで。

一瞬、彼が人間以外の存在のように思えてしまった。

「意識は、肉体を好きに替えられる。技術さえあれば、それは手を変え品を変え…そうして肉の欲望に取り憑かれ、不老不死という目的に用いて、人間を超えた気分に酔い痴れた…馬鹿げた人間共の姿を、お前達も見ているだろう」


藤姫。


「弱い人間でさえ…別の存在に変貌できるんだ。羅侯(ラゴウ)という災厄が、肉体を持って人型になるのは、おかしなことではないだろう」


「しかし何だって今、紫堂も皇城も、師匠の遺伝子を利用して電脳世界を制御しようなんて思うのさ。今の今まで封印だか出来たのならば、このままいけるじゃないか。変だよ、慌ててさ」


「皇城の封印も…完璧ではない。皇城において、大いなる力を持つ者が少なくなったんだ。それは綻びとなり、そこから…羅侯(ラゴウ)という、悪い星巡りが重なれば、今までの苦労は全て水の泡」


「じゃあ今が、その悪い星巡りというのか?」


僕の問いに朱貴は小さく頷いた。


「ああ。だから、皇城としても、利用出来る全ての力で、羅侯(ラゴウ)による破壊を防ぎたがっているんだ。矜持に賭けて」


「確か皇城は…妖魔…だかとかいうものを祓っているんだよね。陰陽道で。それも羅侯(ラゴウ)と関係が?」


「妖魔は…羅侯(ラゴウ)の残滓だ。皇城の…全盛期に比べれば、失いつつある封印力の穴から、出て来るのが不可視の妖魔。羅侯(ラゴウ)本体のように、人型を取りたがるから、傍目では不可解な動きをする。

そうして取り憑かれた人間の精神は、妖魔の餌となり消えて行く。

お前達も見ているはずだ。強制的に蠱毒という呪いによって、妖魔化された人間達の行く末を」


「…"生ける屍"…」


僕から、溜息のように言葉が漏れた。