シンデレラに玻璃の星冠をⅢ

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「ふぅ…話がそれちゃったけれど。ええと…皇城は、羅侯(ラゴウ)の封印という生業のことを隠そうと、色々画策しているという処まで、話していたよな…」


由香ちゃんが切り出してくれた。

脱線したまま、会話を終わらせたくない。

謎めいた朱貴が、少しでも情報をくれるというのなら、くれる時に少しでも多く聞いておきたい。


「そうだそうだ。クマが左遷された話をしてたんだ。

けどさ、羅侯(ラゴウ)を封印するということが判られたとしても、皇城にとって痛手にならない気がするんだよな、ボク。

陰陽道だとか妖魔だとか、小猿くんに聞いていたボクでさえ、"へーほーふーん"的反応だし、羅侯(ラゴウ)と言われてリアルにピンとこない。何か…遠い世界の話聞いている気分なんだ。バレたら大変になるようなものには思えないんだよ」


「正直…僕も、皇城が情報操作するまでの重要性は見えない。僕でそう思うのなら、仮に三沢さんがそれを知って報道したとしても、その内の何割が深刻に考えるだろう。お伽噺、SF…鼻で笑いそうだ。

"陰陽道"、"妖魔"、"羅侯(ラゴウ)"…。人は…自分が理解しにくい不可解なものには、あえて深追いして究明したいとは思わない。

受入れがたいものが起きれば、勝手に自分で解釈して自己完結する。納得出来るものをすぐ見つけることで、自分を安心させる。人間の心は、果てなく…その人を守ろうとする防衛本能に優れているから。

そう考えれば、そうした心理的な壁が…皇城を逆に守ると思うから、皇城が神経質になることでもない気がするんだけれどね。僕…甘いのかな」


「甘い」


朱貴は、即答だった。


「それは…裏の表だけなら功を奏すかもしれない。

だが万が一でも、裏の深層部を知られれば…皇城は…壊滅する」


「封印云々に…まだ何か、"秘密"があるのか?」


「………。位階制度は、秘密裏の仕事をするために生まれたもの。封印というのはその仕事の1つにしかすぎない。隠匿された"秘密"は…個人では抱えきれない程大きいものなのだ。

よって位階授受者は、皇城に対し、そしてその秘密に対し…絶対なる忠誠を誓わされる。途中で位階を辞したり皇城を離れることは許されない。逃げでもすれば、死の果てまで…他の位階者たる仲間が追ってきて、確実に仕留めるだろう。

封印された羅侯(ラゴウ)の復活を妨げる為には、何でも許されると考えている…一種の、信仰にも似た殺戮集団ともいえるかもしれないな」


「そこまでの"秘密"を…羅侯(ラゴウ)というものが担っていると?」


「ああ、そういうことだ。羅侯(ラゴウ)は神だの悪魔だの、そんな陳腐な言葉では片付けられないものだ」


そして言葉を切り、僕達を気怠げに見渡した。