シンデレラに玻璃の星冠をⅢ



これは正しく――


「師匠…これも愛の表現なんだね」

「うん。痛い程の強い愛だね」


「きっとさ、七瀬のベッドは、ふかふかなんだね」

「うん。きっと此処にはあるけれど、彼女以外に使わせたく無いんだね」


「あれ、師匠。そういえば、クオンは?」

「そういえば…。あれ?」


すると芹霞の眠るカーテンに首を突っ込んだ由香ちゃんが、潜めた声を上げた。


「居た!!! 神崎の布団に潜って寝てるよ。ちゃっかりしてるな…」


いらっ。


「………」

「師匠?」

「………」

「師匠ってば!!」

「え?」

「相手は、ニャンコだから」

「うん……」


駄目だな僕、嫉妬深くて。

ネコを追い出して、ネコの代わりに隣で寝たいなんて思ってしまった。


数十分後――。


床に直接マットレスを強いて作った寝床に、全員がかりで百合絵さんの巨体を持ち上げた。


「意外や意外。思ったより重さが然程感じない。ずんと来ないね」

「そうだね。僕ももっと腰にくるかと…」


「朱貴は…肩に担いで、あたしのマンションから車経由で桜華に運んだよな」

「何だ?」

「今更だけど、お前…1人で大丈夫だったのか?」


心配気な紫茉ちゃんの問いかけに、朱貴は鼻で笑うように言った。


「大丈夫じゃないといったらどうするんだ? お前が尽きっきりで俺の看病でもするか?」


「看病!!? そんなに悪いのか、身体!!! ああ、判った。空いているベッドに…」

「……冗談じゃない、この阿呆が!! 出来ることと出来ないことをきちんと判断してから物を言えッッ!! お前にこの俺の看病など出来るはずがないッッ!! させて溜まるかッッ!!」

「痛い、痛いッッ!! 殴ってから言うなよ!!」


何か…紫茉ちゃん、可哀相。


だけど多分、そんなやりとりさえ、紫茉ちゃんと交流できる朱貴にとっては嬉しいことのはずで。


僕には…紫茉ちゃんに同情しながらも、見ているだけしか出来なくて。


それが朱貴の…忍んだ愛の形というのなら、僕達は邪魔出来ないんだ。

せめて、紫茉ちゃんに届くよう…見守ることしか。


だからごめんね、紫茉ちゃん。

頑張って…気づいてあげてね、朱貴の愛を。


僕…朱貴の気持ちがよく判るから。

鈍感女の子を好きになった、男の辛さは…。

守り抜きたい、男の決心は…。