「何でクマだ?」
「ああ、毛むくじゃらだから芹霞がクマと言って。本名は三沢玲央…」
そう僕が説明した時だった。
おかしな声が聞こえたのは。
「ぬ!!!!」
ぬ?
そして――。
ドッシーン。
バリバリバリ…。
「何の音だ!!!?」
何かが落ちた音。
芹霞に異常が!!?
敵の侵入!!?
慌てて芹霞の元に駆け寄った僕達だが、芹霞には特に異常なく。
「師匠、こっちだッッ!!!」
隣の…仕切りカーテンを開けた由香ちゃんに導かれ、
そして僕の目に映ったものは――…。
………。
「……百合絵さん…ベット…耐えられなかったんだ」
「パイプベッド…だものね…」
簡易ベッドが、百合絵さんの体重に耐えきれずに、真っ二つ。
床に落ちた百合絵さんは、そのまま意識を失っているようだ。
窓を突き破って壁に衝突した百合絵さんの怪我は朱貴が素早く手当てし、何故か紫茉ちゃんのマンションから持ち出されたクーラーボックスも傍に置かれてあり、その氷水は百合絵さんの顔の氷嚢として使われている。
折角朱貴が手当てしたのに…また打ち身が増えていないだろうか。
百合絵さん…女性なのに…。
中途半端に閉じられたクーラーボックスからはみ出ているのは、青い紙端。
………。
見ていない。
知らない。
それ処じゃない。
芹霞のこと、桜のことだって解決していないし。
朱貴曰く…マンションの下に居たのは、動けずに仰向けに伸びたクオンだけだったらしい。
桜……。
僕は、お前を敵にしたままではおかないからな。
必ず、元に戻すからな。
「なあ朱貴。百合絵さんの体重ならこんな簡易ベッドを使わずに、あたしがいつも使わせて貰っているふかふかベッドで…」
紫茉ちゃんが気の毒そうな声を出して、朱貴に声をかけているが、朱貴の顔は冷ややかで。
「知らん」
たった三文字で、即座に却下。
「知らんって…だっていっつも…」
「気のせいだ」
「そんなことは…」
朱貴の顔が不機嫌そうに歪み、その目が剣呑に光り攻撃性を強める。
「百合絵さんが駄目なら、せめて芹霞に…」
「知らんと言っているだろうがッッ!!! 自分だけが"ふかふか"だと!!? 寝惚けるなッッ!!! そこまで特別扱いされたくば、それなりのものを俺に提示しろ!!!」
「え、えええ!!? 何でそうなる!!? だってあたし、いつもふかふか…痛い、痛いって!!! 朱貴、そのぐりぐりは…痛い、やめろって、朱貴ッッ!!!」
紫茉ちゃん…両コメカミ、朱貴の両手でぐりぐりされている。
女の子なのに…容赦ない。

