シンデレラに玻璃の星冠をⅢ


「すんなりとは信じられないね。まるでSFの世界のように感じるよ。電気の力を使える僕が言うのも…なんだけどさ」


僕が正直にそう言うと、朱貴は口角を吊り上げた。


「それは紫堂の言い分。皇城であれば…特に位階を持つ者であれば。羅侯(ラゴウ)という存在は、始めから重要な意味を持つ。だからこその、羅侯(ラゴウ)象徴の九曜紋」


「それは…翠も知っているのか?」


「半分だろうな。皇城文書の表部分…《妖魔》のことしか知らないはず。裏の部分…皇城の深層部分の文書は知らないはずだから。

皇城は…羅侯(ラゴウ)を封印し続ける為に存在する。だから…元老院など、現世の欲の限りを尽くす輩とは、志が違う。

だから元老院範疇に入らず、元老院もまた…皇城を汲みすることは出来ず。

判っているからだ。皇城の…その生業の重要性を。

皇城が"仕事"を放棄すれば、東京など…直ぐに廃れる」


僕は言葉が出なかった。


「自分自身の為に"力"を使う紫堂と、大いなる目的の為に"力"を使う皇城とは、一線を画している。守る規模が違う。志が違う」


誇らしげにも聞こえるけれど、朱貴の表情は…どこまでも嘲笑うようなもので。その矛盾した反応に、僕は訝ってしまう。


「しかしこれは…皇城が隠匿してきた部分であり、それが表だつことはないだろう。…偽装(フェイク)の顔を併せ持ち、情報操作も徹底している。どんな情報の漏れも許さない」


「あ……」

「どうしたの由香ちゃん?」


「ん…。クマがね、皇城の"何か"をすっぱ抜こうとして、かなり粘っても駄目だったと言ってたの思い出して。全敗、惨敗で…結局色々な別局に左遷させれられたと言ってたな」


「裏情報集めが得意な三沢さんでも駄目だったのか。際どい…強硬手段もとったんだろうに」


そこまでしても出ない皇城の情報。

そこまで三沢さんが固執する皇城の情報。


三沢さんの嗅覚は優れているとはいえ――

どちらも…普通ではないように思えた。


「……誰だ、その怖い者知らずは?」


朱貴が目を細めた。


「三沢さんは最終職歴はAPEXだけれど、主要テレビ局に在職していた経歴がある、元ハッカー。カメラから記者から編集から、何でもこないバイタリティー溢れる人だ」


僕が簡単に説明すると、ますます朱貴は訝しげに目を細める。


「そんな…懲りない煩い"ムシ"を、皇城が…"左遷"だけで許し続けたと? 五体満足で? 周涅は…報告を受けていなかったのか?」

「周涅はどうだか判らないけれど…そうだね、クマはピンピンだよ」


腑に落ちない…そんな表情を色濃くした朱貴。

恐らく皇城は、今まで刃向かう者達に何らかな制裁を加えてきたのだろう。


潰さずに追い払ったことに、周涅ら皇城の思惑があるのだとすればどんなことだろう。