選ばれているのは僕ではなく…櫂だ。
それは…芹霞に?
――紫堂櫂を愛してる!!
芹霞が求めているのは…櫂だけなの?
僕は…必要ないの?
考えれば際限ないけれど。
「身体が吹き飛べば、お前は確実に…終わりだぞ?」
それでもいいと言おうとした時、芹霞の言葉が思い出された。
――か、彼女サンを残して…逝かにゃいでくだしゃい。
僕と、生ある関係を望んでくれる芹霞だから。
「…それ以外の方法があるはずだ!! 闇に頼る以外の方法が!!」
それなら僕は…生きる道を選びたい。
――芹霞と。
僕は諦めない。
僕が出来る方法で、僕が芹霞を救いたい。
櫂の影に怯えるのではなく。
櫂に頼りすぎるのではなく。
僕だから出来ることで、芹霞を救いたい。
「方法は…ある」
芹霞の胸を隠すように服を重ね合わせ、布団をかけた僕に…朱貴は、神妙な顔でそう言った。
「緋狭も妹も…緋影の遠縁。故に緋影の肉体には耐性がある。
拒絶するのは…身体のせいではない。心のせいだ」
「心……?」
「直前まで彼女は何をしていた?」
「普通だったぞ。だけど桜が操られて、その原因になった黄鉄鉱(パイライト)の石を見た途端、芹霞は…」
紫茉ちゃんの声に。
「金…? 黄色じゃなくて?」
え?
何で黄色が出て来る?
「黄色じゃない。金という単語が、芹霞の口から漏れていた」
「金。金の…心臓…」
僕は、かつて陽斗が、緋狭さんから"金"と呼ばれていたことを思い出す。
「心臓というより…金の記憶を…拒絶したいのか?」
朱貴は腕を組んでそう呟いた。
「陽斗の記憶!!? そんなことないよ、神崎は!!! 陽斗を忘れちゃ駄目だって、だから心臓の痕を消そうとしていなかったんだぞ!!?」
「もしかして…」
喉の奥がひりつく。
「櫂と…結びつくのが心臓だから。だから…陽斗の記憶を、陽斗の名残を…消そうとしているんじゃ…」
僕の喉から、絞り出るようにして出た言葉。
「だったら…」
ああ…。
「だったら」
芹霞。
「陽斗という心臓を拒絶させない為には、陽斗を思い出させるか、櫂を思い出させるしかないのか!!
だけどそれは結局…芋蔓式に全てを思い出すということだ!!」
思い出したいの?
櫂が思い出せないのが…苦しいの?
櫂を…求めているの?
――紫堂櫂を愛してる!!
僕は唇を噛んだ。

