あたしがベランダから下を覗くと…
「………」
「何だ、芹霞どうした!!?」
紫茉ちゃんも下を覗くと…
「………」
「どうしたの、一体?」
玲くんも覗いたのだけれど…
「………」
背後から、大きな溜息が聞こえて。
あたしは振り返りながら、溜息の主に聞いた。
「由香ちゃんも、見てみる?」
すると由香ちゃんは真面目な顔で頭を横に振って。
「想像出来るから…やめとく」
「うん、それがいいと思うよ? クオンもきっと喜ぶし」
「なあ玲。猫っていうのは…」
「ネコはね、換気口からも着地出来ない生き物らしいよ」
「そうなのか。初めて知った…。あたしは…世間知らずのひよっこだな」
「大丈夫。僕も引き籠りの人間だし」
「そうか。あたし達気が合うな!!」
ちくん。
玲くんと紫茉ちゃんが微笑みあう姿を見ていると、胸に何か突き刺さってくる。
お似合いの2人。
子供まで所望されている2人。
あたしは爪弾きにされたようで。
息苦しい。
何だか…心臓のあたりが痛い。
「そうだ師匠。何で副団長だと!!? あの後、葉山が暴れたから聞き損なったけれど」
玲くんは、あたしが引き抜いた針を手にしていて。
「この針は…仕込み針なんだ。この針の先端に、クレンブテロールという興奮剤かつ筋肉増強剤の薬を仕込んで、内耳の奥…中枢神経に直接送り込む。
桜の瞳孔が開いて顔は上気した興奮状況、そして痛みを感じないことや凄い力だったのを思えば…クレンブテロールだと思う。
これはね…副団長の武器なんだよ」
「でも!!! 紫堂本家でそれを見た葉山は、訝っていただけで!!! 副団長の仕業だって気づいた素振りはなかったぞ!!? 団長の葉山が何でそれに気づかないのさ!!!」
「ああ、副団長がこれを使っていたのは、桜が団長になる前だったからね。桜は1匹狼で、団長職以外の下積み生活をしていないから、誰がどの武器を得意とするのか、把握しきれていない部分がある。大体は判っているんだけれど、この武器は…当主が止めさせたんだ」

