1回だけじゃない。
ペロペロペロ…。
紅紫色の瞳で。
「やあ…ん。埃まみれの中…何、何!!?」
僕はすっと目を細くする。
ふうん…?
見てたんだ…?
あそこから見ていて…妬いてたの?
僕が落したから怒ったんじゃないんだ。
へえ…僕の挑戦状?
機嫌を損ねた僕に、歯を剥き出しにしたネコは笑う。
瑠璃に色を戻した瞳で。
挑発、してるんだ。
ネコのくせに。
そして。
ふさふさな…汚い毛をぶるぶると震わせると、埃を盛大に撒き散らせて。
「うわっ、クオン凄い埃…っくしょん!!!」
芹霞につられて、僕までくしゃみをした途端、またあの歯の剥き出し"笑顔"を見せたクオンが…僕に飛び蹴り。
正しくは…僕の頬だけに向けて。
「!!!?」
僕は急いでかわし、かわし際、その身体に手刀を入れる。
しかし寸前でひらりと身を翻して、僕の攻撃をかわしたネコは、すたっと床に降りて、またもや挑発するようにニャアと鳴く。
何だよ、このネコは!!
動物の本能だけとは思えぬ、慣れた身のこなし。
「っくしょん、っくしょん!! ぶはっ…換気、換気ッッ!!!」
鼻と口を手で押さえた芹霞が、鍵を開けてドアを開けて逃げ出す。
同時にクオンが僕に向かって飛び跳ねた。
そう…思う存分やりたいんだ?
随分と賢しいね?
だけどね、人間の方が賢しいんだよ!!!
僕と…ネコとの交戦。
至って真面目にネコと交戦。
攻撃を食らわすというよりは、いかに早く避け合うかの素早さ勝負。
ふと、思った。
ねえ…なんでこうなるの?
今までの熱はどうなったの?
鏡に映った僕は、欲と引き換えに益々腫れあがらせた頬をして、更には芹霞のボンドとクオンの埃をかぶって真っ黒で。
どう見ても…
芹霞の"彼氏サン"には相応しいないようで。
半分涙目で、じんじん痛む頬を手で押さえ、人間としての矜持に賭けてネコの攻撃をかわしていた。

