シンデレラに玻璃の星冠をⅢ



1回だけじゃない。


ペロペロペロ…。

紅紫色の瞳で。


「やあ…ん。埃まみれの中…何、何!!?」


僕はすっと目を細くする。


ふうん…?

見てたんだ…?

あそこから見ていて…妬いてたの?


僕が落したから怒ったんじゃないんだ。


へえ…僕の挑戦状?


機嫌を損ねた僕に、歯を剥き出しにしたネコは笑う。

瑠璃に色を戻した瞳で。


挑発、してるんだ。

ネコのくせに。


そして。

ふさふさな…汚い毛をぶるぶると震わせると、埃を盛大に撒き散らせて。


「うわっ、クオン凄い埃…っくしょん!!!」


芹霞につられて、僕までくしゃみをした途端、またあの歯の剥き出し"笑顔"を見せたクオンが…僕に飛び蹴り。


正しくは…僕の頬だけに向けて。


「!!!?」


僕は急いでかわし、かわし際、その身体に手刀を入れる。

しかし寸前でひらりと身を翻して、僕の攻撃をかわしたネコは、すたっと床に降りて、またもや挑発するようにニャアと鳴く。


何だよ、このネコは!!

動物の本能だけとは思えぬ、慣れた身のこなし。


「っくしょん、っくしょん!! ぶはっ…換気、換気ッッ!!!」


鼻と口を手で押さえた芹霞が、鍵を開けてドアを開けて逃げ出す。


同時にクオンが僕に向かって飛び跳ねた。


そう…思う存分やりたいんだ?

随分と賢しいね?


だけどね、人間の方が賢しいんだよ!!!


僕と…ネコとの交戦。

至って真面目にネコと交戦。


攻撃を食らわすというよりは、いかに早く避け合うかの素早さ勝負。


ふと、思った。


ねえ…なんでこうなるの?

今までの熱はどうなったの?


鏡に映った僕は、欲と引き換えに益々腫れあがらせた頬をして、更には芹霞のボンドとクオンの埃をかぶって真っ黒で。


どう見ても…

芹霞の"彼氏サン"には相応しいないようで。


半分涙目で、じんじん痛む頬を手で押さえ、人間としての矜持に賭けてネコの攻撃をかわしていた。