「いらん」
「いらねえ」
「貰ってよ。芹霞ちゃんにつけたら、とってもとっても可愛くて、思わずぎゅうしてちゅうしたくなる…ラッキーアイテム」
「………。…貰っておく」
煌がふて腐れたような顔で、青い袋を奪い取る。
すると氷皇は意味ありげな笑いを見せると…完全に人形の姿になって、床に倒れた。
「……煌…」
「おう。早く行こうぜ?」
氷皇が消えれば、煌はほくほく顔で。
「芹霞に可愛い…何かな…これ」
ああ、やっぱり煌は煌で。
見ていると笑いが込み上げる。
今まで散々俺達は泣いてきて、あれだけ凄惨場面に震えていたのに。
そう、俺達にも…ちゃんと時間は流れているんだ。
留まりすぎてはいけない。
前を…歩いて行くためには。
怯えは…勇気という名に昇華出来る。
過去に囚われるか、前に進む強さとなるか。
意志1つで変化出来るもの。
"約束の地(カナン)"から出た時、俺は全てを失った気になっていた。
0からの再出発も必要な覚悟だろう。
しかしその反対に、まだ押しつけがましく…8年前の変貌の覚悟を、人のせいにしていたような気もするんだ。
その努力を芹霞の責任のようにして押し付け、その芹霞に忘れられたのは不条理だと思う俺が何処かにいて。
だけど違うよな。
8年前の悪夢に居たの俺も、俺の一部でしかない。
それ以前の俺も、俺の一部でしかない。
人間が変化出来る存在だというのなら、俺はただ変化しただけの同一人物だ。
芹霞が思い出さないのなら、新たに惚れさせる為にも強くなろうとしていたけれど。
その為にそれまでの思い出を無くした気になっていたけれど。
俺が生きている限りは思い出はなくならず。
なくすことは出来ないんだ。
覚悟の影にあった…怯え。
愛と思い出の"喪失感"は、無意識にも…8年前の悪夢に直結し、俺は必要以上に囚われていたのだろう。
あの時の絶望に。
煌と俺という――
記憶が無い者と記憶が在る者が共存出来るのなら。
芹霞と俺という――
2つの存在だって共存出来る。
ならば――
俺は…人間の…"変化"という再生の可能性にかけて、新たなる道が見付かるような気がしたんだ。
それは意気込みや覚悟ともまた違う、どこかうきうきとさせるようなもので。
一方的に切り捨てなくてもいいと思うことは、何処か安堵させるもので…悦ばしいことだった。
何も捨てずに、記憶の形を変えて、再利用出来る方法を見つけられればと、そう思った。

