シンデレラに玻璃の星冠をⅢ



「いらん」

「いらねえ」


「貰ってよ。芹霞ちゃんにつけたら、とってもとっても可愛くて、思わずぎゅうしてちゅうしたくなる…ラッキーアイテム」


「………。…貰っておく」


煌がふて腐れたような顔で、青い袋を奪い取る。

すると氷皇は意味ありげな笑いを見せると…完全に人形の姿になって、床に倒れた。



「……煌…」

「おう。早く行こうぜ?」


氷皇が消えれば、煌はほくほく顔で。


「芹霞に可愛い…何かな…これ」


ああ、やっぱり煌は煌で。

見ていると笑いが込み上げる。


今まで散々俺達は泣いてきて、あれだけ凄惨場面に震えていたのに。


そう、俺達にも…ちゃんと時間は流れているんだ。


留まりすぎてはいけない。

前を…歩いて行くためには。


怯えは…勇気という名に昇華出来る。


過去に囚われるか、前に進む強さとなるか。

意志1つで変化出来るもの。


"約束の地(カナン)"から出た時、俺は全てを失った気になっていた。


0からの再出発も必要な覚悟だろう。

しかしその反対に、まだ押しつけがましく…8年前の変貌の覚悟を、人のせいにしていたような気もするんだ。


その努力を芹霞の責任のようにして押し付け、その芹霞に忘れられたのは不条理だと思う俺が何処かにいて。

だけど違うよな。

8年前の悪夢に居たの俺も、俺の一部でしかない。

それ以前の俺も、俺の一部でしかない。

人間が変化出来る存在だというのなら、俺はただ変化しただけの同一人物だ。


芹霞が思い出さないのなら、新たに惚れさせる為にも強くなろうとしていたけれど。

その為にそれまでの思い出を無くした気になっていたけれど。


俺が生きている限りは思い出はなくならず。

なくすことは出来ないんだ。


覚悟の影にあった…怯え。


愛と思い出の"喪失感"は、無意識にも…8年前の悪夢に直結し、俺は必要以上に囚われていたのだろう。

あの時の絶望に。


煌と俺という――

記憶が無い者と記憶が在る者が共存出来るのなら。


芹霞と俺という――

2つの存在だって共存出来る。


ならば――

俺は…人間の…"変化"という再生の可能性にかけて、新たなる道が見付かるような気がしたんだ。


それは意気込みや覚悟ともまた違う、どこかうきうきとさせるようなもので。

一方的に切り捨てなくてもいいと思うことは、何処か安堵させるもので…悦ばしいことだった。


何も捨てずに、記憶の形を変えて、再利用出来る方法を見つけられればと、そう思った。