代わって、ぼんやりとした風景が浮かび上がってくる。
そして、声が聞こえてくる。
何処かからか――
神崎家の…幸せだった頃の笑声が…。
ああ、幻かな。
今の神崎家の間取りで…
今の芹霞と、おじさんとおばさんが談笑しているのが見えるのは。
俺達を見て…手招きしている。
そして…赤い女性。
「櫂…幻覚かもしれねえけど、
皆が見える。緋狭姉まで…笑ってるんだ。
この俺にまで…来いって手招きしているのが見える…」
悪夢が途絶えても、俺の涙は途絶えることなく。
煌の涙も止まることはなかった。
それに対して恥ずかしいとかいう気持ちは起きなかった。
それが今の…自然な姿であり、自然な感情の発露だったから。
幾度もこの悪夢の舞台で涙を流してきた俺達。
自らの非力さを呪い、辛くて、哀しくて。
だけど俺達は判っている。
今流している涙の意味は…変わっていることを。
「本当に…いい家族だよな…神崎家…」
「ああ…とても温かい家族だった。煌、お前も一員だぞ?」
「許して…くれるかな」
「あの笑顔は許してるさ。失望させないように強くなろうな」
「ああ…」
俺達は泣きながら、笑い合った。
記憶は巡る。
幸せと絶望と。
それが…人の死によってなされてはいけない。
もう二度と。
その決意を込めて、悪夢の元凶を切ったんだ。
どうか…煌が煌であるために。
許して下さい、おじさん…おばさん…。
緋狭さんと芹霞は…守りますから。
俺は…貴方達のくれた優しさを、生涯忘れません。
『ROUND2
――終了』
緋狭さんの声がした。

