シンデレラに玻璃の星冠をⅢ



代わって、ぼんやりとした風景が浮かび上がってくる。


そして、声が聞こえてくる。


何処かからか――

神崎家の…幸せだった頃の笑声が…。



ああ、幻かな。


今の神崎家の間取りで…

今の芹霞と、おじさんとおばさんが談笑しているのが見えるのは。


俺達を見て…手招きしている。


そして…赤い女性。


「櫂…幻覚かもしれねえけど、

皆が見える。緋狭姉まで…笑ってるんだ。

この俺にまで…来いって手招きしているのが見える…」


悪夢が途絶えても、俺の涙は途絶えることなく。

煌の涙も止まることはなかった。


それに対して恥ずかしいとかいう気持ちは起きなかった。

それが今の…自然な姿であり、自然な感情の発露だったから。


幾度もこの悪夢の舞台で涙を流してきた俺達。

自らの非力さを呪い、辛くて、哀しくて。


だけど俺達は判っている。

今流している涙の意味は…変わっていることを。


「本当に…いい家族だよな…神崎家…」

「ああ…とても温かい家族だった。煌、お前も一員だぞ?」

「許して…くれるかな」

「あの笑顔は許してるさ。失望させないように強くなろうな」


「ああ…」



俺達は泣きながら、笑い合った。


記憶は巡る。


幸せと絶望と。

それが…人の死によってなされてはいけない。

もう二度と。


その決意を込めて、悪夢の元凶を切ったんだ。


どうか…煌が煌であるために。

許して下さい、おじさん…おばさん…。


緋狭さんと芹霞は…守りますから。


俺は…貴方達のくれた優しさを、生涯忘れません。




『ROUND2 

――終了』




緋狭さんの声がした。