変えてはいけないと…いつからそう思っていたのか。
これが事実だと…いつから諦めていたのか。
記憶は…夢。
あの時の"現実"は…
今は過ぎ去りし"過去"のもの。
"過去"は"記憶"となり"夢"となる。
俺達が未来に進もうとするならば、
時間を遡行してはいけない。
夢と現実は…区別しないといけない。
そう、これは…明晰夢。
夢だと自覚している夢だ。
夢と現(うつつ)に重なるものがあるのなら、それを排除しない限りは悪夢は続く。
夢の象徴は――
夢で終わらせねばならない。
その為に。
その為には……。
「煌。俺は――」
「ああ…判ったよ、櫂」
煌は柔らかく笑った。
「俺も…いい加減腹立っていたからな」
手に…顕現したのは、偃月刀。
その覚悟を目にして、俺は頭を下げた。
「…悪い。俺の悪夢だ。
本当の…"お前"は1人だけだから」
「いいってことよ。判ってるから」
俺は涙を堪え、煌と共に…前方を見据えた。
橙色の小さな制裁者(アリス)、昔の煌の姿を。
俺の悪夢の象徴を。
俺の隣に立つ、17歳の煌が唯一真実のものであるのなら――夢に在住する虚像は…消さねばならない。
俺達が前に進んでいく為には、"妄執"を断ち切らねばならない。
いつだって真実は…1つだけだから。
「行くぞ、櫂」
「……ああ」
そして。
縦に振り下ろされる偃月刀。
真横に切り裂く俺の風。
それは光輝く聖なる十字(クロス)となって、俺の心に焼き付いた。
鮮やかなオレンジ色の髪が、華々しいオーラのように散り…やがて消えて行く。
血に塗れた悪夢の光景が…
少しずつ霞んでいく。
無限再生(ループ)が、途絶えたように思った。

