シンデレラに玻璃の星冠をⅢ



変えてはいけないと…いつからそう思っていたのか。

これが事実だと…いつから諦めていたのか。


記憶は…夢。


あの時の"現実"は…

今は過ぎ去りし"過去"のもの。


"過去"は"記憶"となり"夢"となる。


俺達が未来に進もうとするならば、

時間を遡行してはいけない。


夢と現実は…区別しないといけない。


そう、これは…明晰夢。

夢だと自覚している夢だ。


夢と現(うつつ)に重なるものがあるのなら、それを排除しない限りは悪夢は続く。



夢の象徴は――

夢で終わらせねばならない。



その為に。

その為には……。



「煌。俺は――」


「ああ…判ったよ、櫂」


煌は柔らかく笑った。



「俺も…いい加減腹立っていたからな」



手に…顕現したのは、偃月刀。

その覚悟を目にして、俺は頭を下げた。


「…悪い。俺の悪夢だ。

本当の…"お前"は1人だけだから」


「いいってことよ。判ってるから」


俺は涙を堪え、煌と共に…前方を見据えた。


橙色の小さな制裁者(アリス)、昔の煌の姿を。

俺の悪夢の象徴を。


俺の隣に立つ、17歳の煌が唯一真実のものであるのなら――夢に在住する虚像は…消さねばならない。


俺達が前に進んでいく為には、"妄執"を断ち切らねばならない。

いつだって真実は…1つだけだから。


「行くぞ、櫂」

「……ああ」



そして。



縦に振り下ろされる偃月刀。

真横に切り裂く俺の風。


それは光輝く聖なる十字(クロス)となって、俺の心に焼き付いた。

鮮やかなオレンジ色の髪が、華々しいオーラのように散り…やがて消えて行く。


血に塗れた悪夢の光景が…

少しずつ霞んでいく。


無限再生(ループ)が、途絶えたように思った。