「どうした…?」
「これは…俺の…大事な…もの…?」
大事にしすぎて、記憶の齟齬すら判らずにいた俺は。
もしも此処で――
今の煌と見つけた些細な"証拠"を事実とするのなら。
俺は事実から目を背けて…
俺の一部偏った悪夢の形を、勝手に信じ続けてきたのではなかろうか。
大事に…大事にして。
まるで慈しむように、誰にも触れさせず、そう…俺の顕在意識さえも。
そう…
此処は悪夢なんだ。
記憶と言えど…夢なのだ。
その夢の形が…"現実"への連携を遮っているのだとしたら。
真実や、強さ…現在の"現実"に繋がる全てのものを、邪魔していたのだとしたら。
もしも――。
「これか…」
俺は天井を見上げた。
「克服しないといけないのは――
この悪夢なんだ。
悪夢を忘却させないのではなく。
忘却させるのでもなく。
変化させ――
昇華させること…」
「あ?」
「この悪夢の為に今の俺が在るのではなく――この悪夢はきっかけにしかすぎないということ。原点…回帰、だ」
煌は目を細めた。
「この悪夢が或る限り…恐れが出る。
恐れは強さの弊害となる。
恐れを無くすためには――
俺達自身が…変わらないといけない。
8年前の悪夢。
俺は…逆にそれに囚われすぎていた。
俺の存在意義は…悪夢ではない。
今に繋がる…俺自身の証明だ」
「櫂……」
「煌…。お前がいい例じゃないか。
人間は…変化出来る。
記憶があってもなくてもな。
俺は――
守りすぎていたんだ、この悪夢を」
「え?」
「そう…守っていたのはこの悪夢自体。
だからこの悪夢を変えれば――
此処を抜けられる」

