そんな時、床に落ちている新聞が目に入り手にした。
日付は間違いなく、あの日のもの。
俺は…何気なく、開いて目に飛び込んできたテレビ欄を見る。
ああ、この時間は…あのアニメで…。
「あれ?」
「どうした、櫂?」
俺は、新聞をもっとよく覗き込んだ。
10時だ。
朝の10時に…あのアニメはやっていたはずなんだ。
「ない。あの動物のアニメのタイトルが…」
「は? 何ていうタイトルだよ」
「だから、動物アニメの…」
「だからそのタイトルだって。名前くらい覚えているだろう、お前なら」
覚えて…いなかった。
あの忌まわしきゆんゆんの後に放映されたという記憶はあっても、次のアニメは癒し系でよく見ていたという記憶はあっても、そのタイトルは思い出せなくて。1文字も。何1つ。
「じゃ、さ…今そこでテレビでやってんのは、何よ?」
「その…動物アニメの…」
「けどよ、んなもん…やってねえぞ、さっきから」
そうなんだ。
テレビには、アニメなど映っていない。
映っているのは――
「ニュース?」
厳めしい顔をしたスーツ姿の男性が、淡々と喋っている。
"幼児惨殺猟奇事件の続報"
そんなテロップが流れていた。
「どう見てもアニメじゃねえぞ? けどお前の記憶は、アニメなのか?」
「ああ。その…タイトルが知らないアニメが流れていて、その放映を毎週楽しみにしていた…俺は芹霞と見ようと…」
「流れているのに…お前と芹霞、台所にいたのか?」
「………そうだ」
クッキーを焼いていたから、とはいえ…何でテレビを見ていなかったのか。
あれ程、楽しみにしていた記憶があったというのに。
「お前が勘違いしてる動物アニメって、どんなのよ?」
「犬」
「は? 俺?」
「違うって。本物の犬の方」
「何だ、櫂まで俺のこと…犬と思ってるのかと…」
――ワンワン、ぎゅう…。
絶対、言うまい…。
「その…ワンコが何?」
「……何だろう? 犬…しか記憶がない」
「主人公は動物? 人間?」
「全然…記憶がない」
「変だな、それ」
「ああ…確かに」
「ただこの新聞もテレビも…真実お前の記憶がどうかは判らねえぞ。んな細かい処まで、お前…覚えて無かったかも知れねえし…」
それも一理ある。
だけど…何で…動物アニメだと、今まで思い込んできたんだ?

