「煌…やめろ」
よろよろと櫂が立上がり、俺を制しようとした。
ガン、ガンッッ!!!
俺なんか…俺なんか…!!!
「煌、やめるんだッッッ!!!」
櫂は…俺の頭を両手で挟むと…
そのまま項垂れるようにして泣いた。
「判ってる…全部判っている。
だけどその上で――」
顔を上げた櫂。
涙で濡れた漆黒の瞳は――
突き刺すように真剣で。
「俺達は、お前に生きていて欲しいと願った。
お前と共に生きたいと願った。
俺だけじゃない。
緋狭さんも…芹霞も」
そして慈愛深く。
それはまるで――
緋狭姉のように。
俺は…血が出るほど唇を噛みしめた。
「お前が笑っていけるよう…
あのことはなかったことにするよう…
だからこのことは…
お前には言わないつもりだった。
大切なのは今、昔じゃない。
誰もが、必要ないと…そう思った。
後聞きした、玲も桜も…
同じ意見だ」
「父さん…母さん…
守れなくて…すまなかった…。
もっと早く…私が来れば…」
親の…2つの頭を胸に入れて、
泣いている緋狭姉の姿が見える。
「煌…強くなろう。
こんな悲劇は…
もう、作ってはいけない。
制裁者(アリス)に…
戻るんじゃないぞ?」
櫂は泣きながら笑った。
「お前は…かけがえの無い…
俺と芹霞の幼馴染なんだから」
愛する芹霞を殺した俺に――
櫂は笑ってくれたんだ。

