寂しい。悲しい。
やっぱり…この僕の顔、芹霞は嫌だよね。
そうだよね…。
鏡に映った僕。
腫れ上がって真っ赤に熱をもって…ぷっくぷくな頬。
人間とは思えない、頬袋持った…大きなリス。
「うう……っ」
ショックで、目頭までが熱い。
ドタドタドタ…。
「玲くん!!!」
また芹霞が戻って来た…と思ったら。
「あたしが直して上げるから!!!」
なんでその手に――
「木工用…ボンド?」
しかも…ガチャリと鍵をかけられた。
僕は、底知れぬ不安を感じて後退(あとずさ)る。
「ねえ――
何を…する気なの、芹霞?」
芹霞の目は…凄く真剣で鬼気迫るモノがあった。
「まだ桜ちゃんが帰らないから、仮止めだけど!!! だけどないよりはマシだと思うから!! 糊(のり)よりは強力だと思うし」
仮止め…?
糊…?
「玲くん…ごめんね、あたしが…あたしが…!!!
玲くんの歯を欠けさせてしまったの!!!」
芹霞はうわあああんと泣き出した。
「だからあたし、責任もってくっつける!!!」
強い意志を秘めた黒い瞳。
黄色いボンドが、僕に突きつけられる。
反対の手には…何やら白くて小さいモノ。
まさか…ボンドで、僕の歯をくっつけようとしてるの!!?
しかも…僕、歯っ欠け!!?
僕は慌てて、舌で歯をまさぐってみたけれど…
「欠けてない。だから、大丈夫!!!」
慌ててそう拒んだけれど。
心底…歯が大丈夫で安心したけれど。
「玲くん、そんな優しさはいらない!! 大丈夫、あたし…小学校の時、唯一図工は"3"だったから!!!」
途端僕は、ぶるりと身震いして、壁に張付いた。

