裏にある"真意"が読めないまま、入ったコンビニには、ようやく瞬間接着剤が1つだけあって。

芹霞さんの喜ぶ姿を想像しながら、とりあえず一刻も早く戻り、玲様が目覚められたら相談してみようと思った。


能面のように無表情の店員の襟元にはバッチ。

九曜紋…黄幡会の象徴だ。


裏に控えるのはまた違う自警団。

携帯を片手に私の写メを撮って照合していたみたいだが、すぐにそれをやめた。


私の情報が出回っていた為だとしたら、少なくともそれはブラックリストではないのだろう。

もしくは、黄幡会が特別視する皇城家縁の者とでも記載されているのか。


自警団の動きを封じるものがあるとすれば、あの携帯の中に入っているデータだ。

何処のデータに繋がっているのか判らないけれど、そのデータに基づいて自警団が動いているのであれば、そのデータさえ判れば、"意思"が見えてくるのかもしれない。


データを覘くことが出来るのは、玲様や遠坂由香くらいしかいない。

玲様のメインコンピュータが復活し、玲様がいつものように機械を使うことが出来れば、そのデータに繋ぐことも可能ではないか。

早く、動かす為の電力が回復することを祈るばかりだ。


自動ドアを開けて、左に曲った時だった。


「団長」


待ち兼ねていたかのようなその声に、私は足を止めた。

その呼称を私に使用する者は限られているし、その声は聞き覚えがある。


副団長――

二科宮都(にしなみやと)。


振り返れば案の定、童顔の副団長。


小柄で童顔、一見10代にも思えるが…齢は30歳近いはず。

かつて、櫂様を中心とした私達に対する追っ手の頭であり、櫂様が横須賀にて倒られた後、顔を見てはいなかった。

紫堂の命に従って櫂様を追い込みながら、心内では是としなかった彼は、私たちの逃走時間を設けてくれたこともある。

警護団は櫂様の信奉者の集まりなのだと実感させられた…そういう経緯はあるけれど。


「何で…此処に? 紫堂本家に…何故いなかった!!?」


――団長。副団長はいなかったんです。


百合絵さんは、七瀬紫茉宅でそう言っていた。

警護団の宿舎も全てもぬけの殻であったと。