――まだ体がふわふわして変な感覚だな。
しかも、夢と現実の狭間が曖昧だというのなら…明晰夢にはなりえない。
なりえぬ夢は、想像力で偽りの…擬似感覚を創り出す。
現実的な…偽りの感覚を。
想像力を消すにはどうすればいい?
心が現実に確(しっか)りと根付いていなければ駄目だ。
心が確りとするには?
明確な証拠を…。
真実だという確固たる証拠を…。
今の状況の中で、真実のものをどうやって見つける?
俺は目を細めて、剣で猫を…反対側から襲いかかろうとしていた別の猫に叩き付けて、2匹諸共叩き落とした。
「煌…。今この中で、真実のものがあるとすれば何だと思う?」
囁く声は、煌にとってみれば十分聞こえるはずで。
煌の言葉は、時に啓示のように…本能的に答えてくれるから。
煌ならば…。
………。
ああ…聞いてからなんだけれど…
自分の質問の答えが判った気がする。
「そりゃあよ…。
櫂と…俺だけだろう?」
それ以外何があるんだと言わんばかりの笑いが聞こえて。
ああ、そうだ。
この中で、信じられる"本物"は、俺と煌だけだ。
だから俺は、煌に訊いたんだ。
俺は何この世界に馴染んでいたのだろう。
俺以外が、声1つで俺の五感を奪えるはずがない。
俺の五感は…俺のモノだ。
統制できるのは、俺だけだ。
だとすれば。
俺は――…
剣で自分の腕を切りつけた。
「馬鹿じゃないの?」
「馬鹿かお前…」
煩く大きく響く声が…小さくなる。
俺の痛みが、本当の痛覚が…
偽りの感覚を消していく。
真実の五感を…露呈する。
だから俺は――…
「煌、動くな!!!
お前を…
――斬るッッ!!!」
そう言って、剣を握り直し…
「は、え、あ!!!?」
殺気を飛ばした。
そして、慌てる煌に向け――
「櫂、冗談はやめろ、櫂!!!!?」
躊躇(ためら)うことなく、
剣を振るったんだ。
「櫂…お前…」
蒼白の煌の顔から――
ひらひらと…
目隠し用の布が落ちていく。
褐色の瞳が…驚愕と恐怖に見開かれていて。
「お前――…
何するよ!!?
操られたか!!?
どうしたんだ、櫂!!?
その腕…どうしたんだ!!?」
そう叫ぶから。
「よし、お前も…
見えるようになったな?」
俺は笑った。

