鍛えたと言えども、それは所詮…体の一部分にしか過ぎず。
俺の肉体が全体的に鍛えられてはいなかったことを思い知らされる。
何より…精神が弱い。
負のダメージに揺れる心が弱すぎる。
ペナルティーもそうだろう。
「はい、櫂。新作だよ~あの"お肉"の"下の方"と、クサを使った生春巻き。お肉がコリコリしておいしいよ。はい、"あーーーん"」
レベルが上がれば、芹霞の料理はより"生々しい"ものとなり、五感を襲う刺激が強くなってきて。
そしてそれを喜んで食おうとする動物達の言葉も、俺にはより卑猥なものに…いや卑猥そのものとしてしか、俺には聞こえてこなくなってきて。
その対抗心だけに、がっついて食べる俺は…心身共によろよろで。
食えば体がふらつく程の不味さが襲うと判っていながら、何とも腹立たしい猫とリスの言葉に、焦りのようなあらぬ妄想を掻き立てられた俺は、自ら進んで食べるという愚行。
芹霞が関われば、警戒も無に還る。
どうしても愛を独占したい為に…自滅している。
此処が現実世界ではないと知りながら、耳に入る言葉1つで妄想を"現実化"させてしまっているのは、紛れもなく俺で。
声に…記憶の輪郭を持たせるのは、この俺で。
芹霞を取られたくないという想い故に、直前まで視界に居た…猫やリス像を消してまで、自らが創り上げた記憶の輪郭を勝手に持たせているのは、この俺で。
それは…怯(おび)えのような妄想に揺さぶられたが故に。
判らないから怯えるものと、判っているから怯えるもの…
怯えの種類は2種あるけれど。
妄想は…過去の記憶に起因して。
痛覚は…直前の体感に起因して。
そう思えば、この怯(ひる)みは、未知なるものに対する恐れではない。
俺も煌も…過去の体験があるからこそ、その追憶を原因として怯んでいる。
つまりそれは…
「想像するが故。
今度の要は…心の統制か」
そんな気がする。
記憶の蘇生。
それが怯みの起因となるのなら、確かにその相違を簡単に判別出来る視覚が奪われているのは不利だとも思うけれど。
こうも考えられるのではないか。
ありえないと突っぱねる心さえあれば、必要以上に五感への刺激もないはずで。
ペナルティー時のダメージが、触覚異常によるものがなかったものを思えば…あれは、その時の俺の心が…痛覚以外のものを強く感じていたからではないか…俺はそう思い至る。

