繰り出す拳。
身を捻って足を振り上げれど…
「くそっ…」
当らない。
猫でもリスでも何でもいいのに、まるで当らない!!
隙がない素早い動きに、焦る俺の攻撃は空を切っているようで。
それでも…拳に何かを触れた気配を感じ、喜ぶのも束の間…
「く……っ」
拳に…痛みが走って。
堅いものを殴った為ではない。
びりびりとした過剰過ぎる痛覚。
「櫂…攻撃出来ても…やばくねえか?」
煌の乱れた声が聞こえてくる。
痛み慣れしている煌は、俺程の痛覚を感じていないのかもしれないが、平気で居られる程の微細なレベルではないのは確かだ。
「ああ…でも何とか、
30秒…乗り切らないと…」
攻撃しなければ、終わらないんだ。
今度は逃げ回るだけでは駄目なんだ。
逃げる標的。
自分に返る攻撃の痛み。
それでも…やらないといけないんだ。
パシッ…。
あ…何かのふさふさの毛が俺の顔に触れて…
「!!!!?」
触れただけだというのに、この痛み!!!
叫び出したいほどの激痛に、体に寒気が走る。
猫かリスかは判らないが…その尻尾らしきものが触れただけでも、俺に破壊的な痛みをもたらして。
思わず頬を抑えてよろめいた俺に、猫らしき気配が襲ってきて。
条件反射的に、手で弾いてしまう。
やばい、防御をとってしまった…
そんな反省よりも先に、弾いた腕に新たな激痛が走る。
「くっ……」
声すら出てこない。
『アオ、時間だ』
「あはははは~」
このタイミングで!!!
ドガッッ!!!
背中に…足か、これは。
過敏な触覚に加え、氷皇の足蹴に…溜まらず俺は声を漏らした。
同時に――
「うっ……」
煌の呻き声も聞こえて。
殆ど同時に攻撃されたようだ。
15秒…俺は為す術もなく。
ただ激痛にのたうち回っていて。
『アオ、攻撃やめ。
坊、駄犬、共に家のものめった壊し。
ペナルティレベル2』
最小限のことしか言わないアナウンス。
レベルがあがったらしい。