もしも。
もしも緋狭姉がぴんぴんで、いつもの如く一升瓶片手に現れたら。
俺…泣くかも知れねえよ。
わけ判んねえこと口走って、子供みてえに泣きそう。
子供に…退行しちまうよ。
だけど。
「…煌…惑わされるな」
代わりに、固い櫂の声が聞こえた。
「此処に…緋狭さんがいるはずがない。
夢と現実を…区別しろ」
辛辣な…言葉を――。
俺も…芹霞に飛びついた櫂に言ったんだ。
歓喜している幻想の中、辛い現実に返した。
それは…揺れる心は、
この先…足を引っ張るのが判ったから。
強くなるために戦おうとしている今、俺達はぶれちゃ駄目だから。
そうだ…。
俺も…同じだ。
「……さんきゅ」
櫂はみえねえけど…俺は櫂を感じ取れるから。
そして櫂も俺を感じ取れるから。
「俺の台詞だ」
きっと櫂は笑っているだろう。
判るよ、俺と櫂の仲だもんな。
「ちぇっ。カイクンのってくれないや。ぶぅぶぅ」
何だか…こいつ。
アホハットのノリに似てる。
ん?
アホハットが氷皇のノリなのか?
本物様には、本当にいつもいつも、"必然"に神出鬼没してくれるおかげで、散々な目に逢っているんだし。
まあ、欲しくもねえ青いラブレター貰ってるらしい玲程には、被害はあってねえけれど。
俺だって学習能力はある。
偽者氷皇がいい奴なわけねえ。
"あはははは~"言ってる時点で信用おけねえ。
絶対何か企んでいる気がする。
よし、先手必勝だ。
照準を久遠ニャンコか玲リスだけにしよう。
氷皇が絡んで攻撃に出てくる前に、さっさと決着をつければ、後々面倒なことは起らねえ。
氷皇の提案を逆手にとって、利用してやる!!!
仮に避け切れなくて、久遠ニャンコと玲リスから攻撃を食らう羽目になっても、あんな小さい動物の攻撃なんて微々たる物だろ。
氷皇に比べればダメージなどないに等しい。
なんて。
結局俺は――
軽く考えていたのかも知れねえ。
今…思えば。

