「まあまあ如月。紫堂にも色々事情があったんだよ。例えばCOOL BEAUTY的な?」
「COOL BEAUTY? 何だそれ」
俺は、三日月目の遠坂をぎろりと睨み付けた。
「いやいや、こちらの独り言だよ。ね、凜ちゃん。むふふふふ」
「凜? 凜って何だ? そう言えば芹霞が言ってたような…ええと…確か…玲と久遠と…」
誘い文句に食いつき始めた煌。
俺は慌てて話題を変える。
「な、なあ、煌。これ…痣だと思うか? どう見ても、血色の薔薇の痣(ブラッディローズ)だよな」
赤い痣を反対の手で摩れば、煌の興味は移ってくれたようで
「やっぱ!!!? やっぱ血色の薔薇の痣!!!? お前も出来たの、それ!!!」
「"も"ということは、他にもいるのか、この痣…」
そう言えば煌は――
「俺、制裁者(アリス)化している時…その痣の奴を狩ってたらしい。結構多いぞ、痣の持ち主。ちなみに…桜も芹霞もそうだ。桜は太股…芹霞は首の付け根」
芹霞にあったなんて…。
俺の注意力は、乱れた精神の影響下にあったらしい。
俺は…狂濤の現実に流されることに、抵抗することさえ儘ならぬ状況で。
「…ワンコ」
不機嫌そうな声がして。
「葉山…ズボンはいてるのに、どうして太股の痣を知ってるんだよ!!?」
何だか判らないことで翠が騒ぎ出したけれど。
芹霞と桜も…血色の薔薇の痣?
そして他にも居るという…
同様の痣を持つ者達。
「……?」
視線を感じて、目を向ければ聖で。
薄く…含んだ笑いをしていて。
俺の手に刻まれた血色の薔薇の痣。
首に刻まれた黒色の薔薇の痣。
赤と黒を抱くことは――
今の俺には必然なのだと悟る。
全ては…必然に回っている。
俺の意思とは関係なく。
――坊、いいか?
緋狭さん…。
判っています。
俺は…貴方を失望だけはさせやしない。
貴方の必然は、慈悲の必然。
必ず貴方を救い、貴方の代わりに皆を救い…
――坊。遂げてみせよ。
その約束は忘れません。

