シンデレラに玻璃の星冠をⅢ


「まあまあ如月。紫堂にも色々事情があったんだよ。例えばCOOL BEAUTY的な?」

「COOL BEAUTY? 何だそれ」


俺は、三日月目の遠坂をぎろりと睨み付けた。


「いやいや、こちらの独り言だよ。ね、凜ちゃん。むふふふふ」

「凜? 凜って何だ? そう言えば芹霞が言ってたような…ええと…確か…玲と久遠と…」


誘い文句に食いつき始めた煌。

俺は慌てて話題を変える。


「な、なあ、煌。これ…痣だと思うか? どう見ても、血色の薔薇の痣(ブラッディローズ)だよな」


赤い痣を反対の手で摩れば、煌の興味は移ってくれたようで


「やっぱ!!!? やっぱ血色の薔薇の痣!!!? お前も出来たの、それ!!!」


「"も"ということは、他にもいるのか、この痣…」


そう言えば煌は――


「俺、制裁者(アリス)化している時…その痣の奴を狩ってたらしい。結構多いぞ、痣の持ち主。ちなみに…桜も芹霞もそうだ。桜は太股…芹霞は首の付け根」


芹霞にあったなんて…。

俺の注意力は、乱れた精神の影響下にあったらしい。

俺は…狂濤の現実に流されることに、抵抗することさえ儘ならぬ状況で。


「…ワンコ」


不機嫌そうな声がして。


「葉山…ズボンはいてるのに、どうして太股の痣を知ってるんだよ!!?」


何だか判らないことで翠が騒ぎ出したけれど。


芹霞と桜も…血色の薔薇の痣?


そして他にも居るという…

同様の痣を持つ者達。



「……?」


視線を感じて、目を向ければ聖で。


薄く…含んだ笑いをしていて。


俺の手に刻まれた血色の薔薇の痣。

首に刻まれた黒色の薔薇の痣。


赤と黒を抱くことは――

今の俺には必然なのだと悟る。


全ては…必然に回っている。

俺の意思とは関係なく。


――坊、いいか?


緋狭さん…。

判っています。


俺は…貴方を失望だけはさせやしない。


貴方の必然は、慈悲の必然。


必ず貴方を救い、貴方の代わりに皆を救い…


――坊。遂げてみせよ。


その約束は忘れません。