シンデレラに玻璃の星冠をⅢ


私と目が合うと…玲様は叫んだ。

強く弱く…必死に焦点を私に合わせようとして。


「桜…このままでは駄目だ。このままでは、芹霞を手折ってしまう。散らせてしまう。

ならば、僕の理性が残っている内に。僕が僕である内に」


慟哭している。

消えそうな理性の中で、切に訴える。


「芹霞を傷つける前に、僕を殺してくれッッ!!!」


咆吼。

玲様の…獣のような咆吼。


そんな玲様の叫びに呼応したのが芹霞さんだった。



「玲くんを殺させないッッ!!!」



そして――始まったんだ。



「玲くん、玲くん…しっかりして、玲くんッッ!!!」


バシバシ、バシバシッッ!!!


容赦ない…芹霞さんの攻撃が。


「玲くん、しっかりして!!」


バシバシ、バシバシッッ!!!


ある意味…ショック療法。

確かに玲様の衝動は治まったようだけれど…。


「玲くん、玲くん!!!」


玲様の頬が…。


バシバシ、バシバシッッ!!!


「か、神崎…やりすぎだって。おい神崎」


脳裏に浮かぶのは…煌。

S.S.Aでの芹霞さんの"バシバシ"は本当に凄かった。


玲様の体は、煌の様な非常識な頑丈さはない。


「せ、芹霞さん…もう…」

「神崎、もう師匠は大丈夫だから、な、神崎」


バシバシ、バシバシッッ!!!


「由香ちゃん、今度は玲くんが動かないの。こんなに叩いても反応してくれないッッ!!! もっともっと叩いて、痛みで起こさないと駄目かもしれないッッ!!」


バシバシ、バシバシッッ!!!


「わわわ。神崎、叩きすぎだって!!! どうして君は加減を知らないんだッッ!! 師匠の白い美頬が、赤いモチのようにぷっくりにッッ!!! 神崎の手だって、真っ赤なグローブじゃないかッッ!! 終わりだ!! 師匠…意識失っちゃったよ…。どんだけ凄いんだ、神崎の"バシバシ"。よし葉山、皆で逃げるぞ。あそこに百合絵さんが七瀬担いで待機している。七瀬捕獲はうまくいったみたいだぞ!!」


「あれ…何か玲くんの口から落ちた。…なんだろ、この固くて白いの。……。まさか……歯が……欠けた…とか? 


………。………。


やばっ、やばやばっ!!!

白い王子様が歯っ欠け!!!?

ど、どうしようこれ…これ…瞬間接着剤でつくのかな。

………。………くっつけるしかないな。


よし。由香ちゃんにも誰にも見られてないな。…よかった。

後で…くっつきますように」


由香さんと話していてよく聞こえなかったけれど、芹霞さんはぶつぶつ何を言っているのだろう?


芹霞さんの攻撃が止んだ隙に、私は玲様を抱えて走る。


「ひゃっ…何、クオン逃げて来れたの?」

「ニャア」


芹霞さんの首に巻き付いたクオンと共に。