すると雄黄が笑い出す。
「愛する娘と始めたがっている男が、死を選ぶか」
笑う。
笑う。
何処までも。
選べるはずはないと笑い続ける。
「……始められないのなら。
死んだ方がいい。
僕が…死んでもいいんですか?」
それは僕の――賭けだった。
「僕が死ねば、遺伝子は死ぬ。
それが嫌なら――」
「脅しているつもりか、我らを」
雄黄の目は冷ややかで。
「どうとでも。
僕は人としての愛を貫きます」
「ほう? それはそれは美徳だが、それによって愛する女がその後どうなるか、それは何も考えておらぬと?」
見透かしているつもりか。
僕は…芹霞を守り、これからを始める為に…今此処で中途半端な状態で、死にたくはないということに。
だからこそ――
「そこまで愛を貫いたとして、これからどうするのだ? そなたが好きな女と子でも成すか? そして過去の女と同様、狂い死させ…我が子を殺すつもりか」
くつくつ、くつくつ。
「他人の命を奪ってまで、
"自分"を貫きたいか」
僕は唇を噛んだ。
当主が言った。
「巫女を抱け。子を成せ。
すれば、全て不問にしてやる。
そこから子供も殺さずにいられる術もみつかれば、お前はあの娘と普通に"恋愛"が出来るのだぞ?」
それは悪魔の誘惑のような言葉だったけれど。
判っていない。
僕は未来の為に、今を捨てたくない。
櫂を傷つけてまで芹霞と始めたい今を、疎かに…無駄にしたくない。
何より、裏切りたくは無いんだ。
僕は、櫂だけではなく…助けを求めていただろう子供や"彼女達"を裏切ったというのなら。
今度こそ、何が何でも裏切ってはいけない。
此処で流されては…罪の因果律は回り続ける。
それだけはしては駄目だ。
どこかで食い止めないといけないんだ。
「これが…見えませんか?」
僕は…刀の光をちらつかせた。
「僕の決心は変わりません」
「ならば死んで見せよ」
当主が笑った。
「その覚悟があるならば」

